彭帥

彭帥（ポン・シュアイ、1986年1月8日 - ）は、中国・湖南省出身の女子プロテニス選手です。彼女は、両手打ちのストロークから繰り出される強打と、タフな体格、そして強気な性格から「中国女子テニス界の猛女」と評されることもあります。

プロとしてのキャリア

彭帥は8歳からテニスを始め、2001年には15歳でフェドカップ中国代表に初選出されました。2003年にプロ転向後、2004年のウィンブルドンでグランドスラム本戦デビューを果たしました。2005年にはシングルスランキングで自己最高の31位を記録し、当時の中国女子テニス界最高位となりました。その後、シングルスとダブルスの両方で着実に実力を伸ばし、中国テニス界を牽引する存在となりました。

2007年には、晏紫とのペアでWTAツアーダブルス初優勝を飾り、2008年には孫甜甜とのペアで優勝するなど、ダブルスでの活躍が目立ち始めました。2009年には、謝淑薇とのペアで優勝し、全仏オープンでは準決勝に進出するなど、国際的な舞台でもその実力を示しました。

2010年には、広州アジア大会でシングルスと団体で金メダルを獲得し、ダブルスでも銅メダルを獲得するなど、中国代表としても活躍しました。2011年の全豪オープンでは、グランドスラムシングルス初の4回戦進出を果たし、自己最高ランキング14位を記録しました。

2013年ウィンブルドン選手権では、謝淑薇とのペアでグランドスラムダブルス初優勝を達成し、同年のWTAツアー選手権でも優勝しました。2014年全仏オープンでもダブルス優勝を果たし、グランドスラムダブルス2勝を挙げました。また、2014年全米オープンではシングルスで初のベスト4進出を果たすなど、輝かしい実績を残しました。

2016年には天津オープンでシングルス初優勝を飾り、30歳にして念願のシングルスタイトルを獲得しました。オリンピックには、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロの3大会に出場しました。

2017年には、ダブルスのパートナー変更を巡る問題で、不正防止機関から出場停止処分を受けましたが、2019年には謝淑薇とのペアで優勝、またシングルスでも優勝を果たすなど、復帰後も活躍しました。

性的暴行被害の告白と失踪

2021年11月2日、彭帥は自身の微博（ウェイボー）で、中国の元副首相である張高麗から性的暴行を受けたと告白しました。この告白は瞬く間に拡散されましたが、中国のネット検閲によりすぐに削除されました。

彭帥の告白によると、張高麗が北京市党委書記だった時期（2007-2012年）に二人の間に不倫関係があり、2018年に張高麗が引退後に再び関係を持ったものの、2021年10月末に言い争いになり連絡が途絶えたとのことです。この告白の後、彭帥は消息不明となり、世界中で安否が懸念される事態となりました。

女子テニス協会（WTA）は、この件に対し深い懸念を表明し、徹底的な調査を求めました。国際オリンピック委員会（IOC）は、彭帥とテレビ電話で連絡を取り、無事を確認したと発表しましたが、その詳細が不明瞭なため、疑問の声も上がりました。WTAは、彭帥の安全と自由が確認できないとして、中国での大会を中止するという厳しい措置を取りました。

その後、彭帥は中国メディアの取材に応じ、性的暴行の事実を否定し、自由であると訴えましたが、その発言の背景には中国政府の意向があると指摘されています。2022年2月には、フランスのメディアのインタビューで改めて性的暴行を否定し、現役引退を表明しました。

2023年4月、WTAは中国での大会再開を発表しましたが、これは彭帥の状況が改善されなかったこと、そして経済的な理由によるものだと報じられています。

結論

彭帥は、テニス選手として輝かしい実績を残しましたが、性的暴行被害を告発したことによって、その後のキャリアと人生が大きく変わりました。彼女の安否と安全を巡る問題は、中国の人権問題、そしてスポーツ界におけるハラスメント問題として、国際社会に大きな影響を与えました。

彭帥の勇気ある告発は、#MeToo運動の一環として、中国国内だけでなく世界中に波紋を広げました。彼女の経験は、権力による性的搾取や、個人の自由が制限されることの危険性を改めて浮き彫りにしています。

今後の彼女の動向、そしてこの問題に対する国際社会の対応が注目されます。

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