御食国

御食国（みけつくに）について

御食国とは、日本の古代から平安時代に存在した地域で、特に皇室や朝廷に海産物を貢進していた国々を指します。主に海水や漁獲物が贄（にえ）として捧げられ、これには穀物を除く副食材が含まれていました。律令制の下では、租・庸・調の税と共に、贄の納付も義務付けられていたと考えられています。『万葉集』や『延喜式』にその様子が記載されており、具体的な国名として若狭国、志摩国、淡路国などが特定されています。

御食国の背景

古くから、塩や鰒（あわび）、海草といった海の幸が神事において重要な役割を果たす「神饌」として使用されてきました。これらの海産物が豊富に獲れる地域を支配することは、その地域の権力者にとって、政治的な意味合いを持っていました。贄の制度は、初期の史料においても確認でき、日本書紀の記述にもその存在が示されています。

贄を納める義務を持つ者を贄人と呼びましたが、実際に贄を納めることにより、他の税から免除されたかは不明です。しかし、神々に海の幸を捧げるという元々の自発的意義から、次第にその貢物を皇室が食べることで支配を示す儀式に変化したと考えられています。この変化は、贄が次第に税収のように扱われるようになったことを示唆しています。

各国の状況

若狭国

『延喜式』によると、若狭国は10日ごとに「雑魚」、節日には「雑鮮味物」、年に一度「生鮭、ワカメ、モズク、ワサビ」といった品を御贄として納めることが定められていました。文化の発展とともに、若狭では塩の生産が盛んになり、製塩施設も発見されています。地理的にはリアス式海岸が海産物の豊富さをもたらし、限られた田畑の面積が特殊な立地を形成していました。

志摩国

志摩国については、同じく『延喜式』に記載されており、10日ごとに鮮鰒などを納めることが義務づけられていました。初めは一国一郡だったものが後に二郡となり、田畑が少なく、周囲の田が割り当てられる形になりました。

淡路国

淡路国も『延喜式』に基づき、旬料や節料として「雑魚」を贄として納めることが定められ、内膳司の重要な地位を持つ阿曇氏が支配していました。従来の特性を持つにもかかわらず、特殊な国として成立していた点が評価されています。

膳氏と阿曇氏

膳氏は皇室や朝廷の食に関わる重要な役割を果たしており、高橋氏に改名しています。膳氏の起源に関する伝承には、安房国での天皇への献上があり、朝廷に密接に関連していました。逆に、阿曇氏は淡路を中心に権力を持ち、海人を束ねる重要な一族です。

万葉集における御食国

万葉集には、御食国にまつわる賛美の歌が多く記されています。天皇の国に対する賛美は、その地域の支配を暗示するものです。御食国は直接的な支配の象徴であり、貢物を通じてその地域の統治を行うことの重要性を示しています。

現代における御食国の価値

今日、かつて御食国だった地域は、その歴史的背景を観光資源として盛り上げています。2006年には複数の自治体が「御食国サミット」を開催し、共にその文化や歴史を共有する機会を設けました。御食国の名は地域振興の手段として、今もなお重要な役割を果たしています。

もう一度検索