折田先生像

折田先生像とは

折田先生像（おりたせんせいぞう）は、京都大学に存在した、旧制第三高等学校の初代校長である折田彦市を記念する銅像です。しかし、その銅像は、長年にわたる落書きやいたずらによって変容を遂げ、最終的には撤去されました。現在では、有志によって制作された、折田先生像を模倣したオブジェが、京都大学の入学試験シーズンになると現れるという、ユニークな文化となっています。

本来の折田先生像

折田彦市は、第三高等学校の校長を30年もの長きにわたり務め、京都帝国大学の設立にも尽力した人物です。彼の自由な学風は、後身である京都大学にも影響を与えたと言われています。

折田先生の功績を称えるため、過去に3度像が制作されました。

1. 1940年：三高卒業生の寄付により制作、三高本館前に設置
2. 1941年：金属供出により消失、代わりに石膏像を制作
3. 1950年：旧制高等学校廃止を記念し、同窓生の寄付により銅像を再建

現存する銅像は、1950年に京都市立美術大学教授の辻晋堂によって制作されたものです。この像は、かつての三高本館、現在の京都大学教養部A号館前に設置されました。しかし、落書きやいたずらが相次ぎ、1997年に大学当局によって撤去され、長らくの間、総合人間学部図書館の地下書庫に保管されていました。

2010年からは三高記念館設置準備室で一般公開が再開され、2013年からは京大百周年時計台記念館1階の歴史展示室にて常設展示されています。よく見ると、台座付近には落書きの痕跡が残っています。

落書きの歴史

折田先生像への落書きは、いつから始まったかは定かではありませんが、徐々にエスカレートしていきました。当初はペンキによる着色などの単純なものでしたが、次第に腕を取り付けたり、自転車を担がせたり、像全体を覆って別の物として展示するなど、その内容は多様化していきました。

1986年には顔を赤くスプレーで塗られ、「怒る人」と落書きされたバージョンが登場し、「京大の『怒る人』」として知られるようになりました。その後、「歌舞伎の隈取」や、合成樹脂による両手を取り付けた「れーにん」、巨大な被せ物による「モアイ」など、さまざまなバージョンが制作されました。

赤と黄色に彩られ、頭にカップを乗せたヤキソバンバージョン、肩に自転車を掛け、「私も入ってます！！」と張り紙のされたサイクリング部勧誘バージョン、女性用下着を顔につけ、「フォオオオ」と書き込まれた変態仮面バージョンなど、数々の作品が生まれました。

大学側は1994年に一度清掃し、落書きを止めるよう立て看板を設置しましたが、その看板に「この像を汚さないで」と落書きされるなど、いたちごっこが続きました。その後も、アンナミラーズのウェイトレスバージョン、ウルトラマンゼアスバージョン、「お父様、お母様、今まで育ててくれてありがとう。今日、私…お嫁に行きます」と張り紙のされた花嫁バージョンなど、多くの衣装や被り物が制作されました。

オブジェの制作

銅像撤去後、オリジナルの像に代わって、有志によって制作されたオブジェが設置されるようになりました。これらのオブジェは、折田先生像がかつて設置されていた状況を模倣するパロディとして、台座や注意書きの看板なども含めて制作されるようになりました。

『北斗の拳』のラオウを模した漢の生き様バージョン、力石徹バージョン、スターガオガイガーバージョン、快傑ズバット像など、さまざまなものが登場しました。

2000年代に入ると、王蟲を連れたナウシカを模した風の谷のナウシカバージョン、M16のモデルガンを構えたゴルゴ13バージョンなどが制作されました。看板の文言もキャラクターに合わせて変更されるのが特徴です。

その後も、ひょっこりひょうたん島のサンデー先生バージョン、Dr.スランプのスッパマンバージョン、折田大仏、ちびまる子ちゃんの永沢くんバージョン、不二家のポコちゃんバージョン、アンパンマンのてんどんまんバージョン、仮面ライダーV3のライダーマンバージョンなど、毎年ユニークなオブジェが登場しました。

2010年代以降も、ポケットモンスターのタケシバージョン、コンタックのMr. CONTACバージョン、地デジカバージョン、TOPPOのノッポトッポちゃんバージョン、チョコボールのキョロちゃんバージョン、サザエさんの中島くんバージョン、星のカービィバージョン、コウメ太夫バージョン、どうぶつの森のリセットさんバージョン、小渕恵三バージョンなど、時代を反映したさまざまなキャラクターがモチーフとなりました。

2020年代に入ると、スーパーヒトシ君バージョン、かいけつゾロリのノシシバージョン、崖の上のポニョバージョン、トニートニー・チョッパーバージョンなどが登場しました。また、本物の折田先生像を模した像や、他のキャラクターをモチーフにした像も同時に出現するようになりました。

看板裏写真

「京都大学からのお願い」と書かれた看板の裏には、女性芸能人の写真が貼られるのが恒例となっています。2014年には艦隊これくしょんの島風のフィギュア写真、2016年にはAV女優の上原亜衣、2021年にはスポーツ選手の本田真凜が登場しました。2017年には、アイドルマスター シンデレラガールズの島村卯月が登場し、架空の人物が初めて登場しました。また、2020年には初の男性芸能人が登場しました。

大学当局の対応

かつて京都大学当局は、この風習を事実上黙認していましたが、2018年以降は大学周辺・構内における設置物への規制・管理を強化し、「折田先生像」に対しても容認しない姿勢を示すようになりました。2019年には、設置された当日の昼に撤去されています。

折田彦市一族の対応

折田彦市の曾孫は、朝日新聞の取材に対し、「折田一族全員、落書きや現状を知っています。誰も怒っていません」とコメントしています。

折田先生像は、京都大学の自由な精神と、学生たちの創造性を象徴する存在として、今後も語り継がれていくでしょう。

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