擬古猫

擬古猫：あやしいわーるど発祥のネットキャラクターの軌跡

1998年12月、インターネット掲示板『あやしいわーるど』で誕生したネットキャラクター「擬古猫」。そのユニークな歴史と、数々の逸話を紐解いていきます。

由来：ギコ〜から擬古猫へ

擬古猫の名称は、あやしいわーるどで頻繁に使われていたインターネットスラング「ギコ〜」に由来します。「ギコギコ」は掲示板に長時間滞在することを意味し、擬古猫はまさに掲示板に入り浸る猫というイメージから生まれました。「擬古」は、古い表現を現代風にアレンジするという意味合いも持ち合わせています。

「ギコ〜」のルーツは、あやしいわーるど常連のコブラがニフティ時代に出会った富士通社員の笑い声「ギコハハハ」に遡ります。コブラらによって広まったこの言葉は、掲示板での交流やネット中毒を表現する言葉として定着しました。

1999年には、歌手桃井はるこが『あやしいわーるど』を訪れ、この「ギコハハハ」を自身のラジオ番組でも使用したことが話題となりました。

「ギコハニャーン」は、漫画『カードキャプターさくら』の主人公木之本桜の口癖「はにゃ〜ん」と「ギコ」を組み合わせたもので、Winampスキンで知られるゆなそふとの棚井慎一氏の発案とされています。同様の造語として「ギコハワワワワ」「ギコキュイーン」なども存在します。

「ギコ〜」は、あやしいわーるど特有の出来事や行動を指す言葉として使われており、「あやしいわーるど的〜」という意味合いを持っていたと推測されます。

文字絵：顔文字からギコネコへ

1990年代のパソコン通信では「ヽ(´ー｀)ノ」などの顔文字が流行しました。あやしいわーるどでも独自の顔文字文化が栄え、「ヽ(´ー｀)ノ」系は「まったり」と呼ばれ、多く使われていました。

擬古猫の文字絵は、あやしいわーるど@本店昼の部で、固定ユーザー「ねこ」(現・まめぞう)によって誕生しました。最初は顔だけのシンプルな猫の文字絵でしたが、後に他のユーザーによって胴体や手足が追加され、現在の形に進化しました。

「ギコギコ」と猫の鳴き声「ニャーニャー」を組み合わせた「ギコニャーニャー」というセリフを話す文字絵が登場し、「ギコネコ」と呼ばれるようになりました。

当初は半角カナ表記でしたが、2007年には2ちゃんねるの「ギコ猫」と区別するため「擬古猫」表記が定着しました。

擬古猫の誕生と変遷

あやしいわーるどIIで誕生した擬古猫は、当初は文字絵が無く、投稿者名として使われていました。後に、ギコネコの文字絵がないことを指摘され、文字絵が追加されました。

その後、擬古猫は様々なバリエーションを生み出し、胴体の長さやポーズ、表情などが変化していきました。シンプルで汎用性の高いデザインも考案され、様々な場面で使用されるようになりました。

擬古猫以前と以後

擬古猫以前は、猫の文字絵は明確なキャラクターではなく、猫の代名詞として使われていました。しかし、擬古猫の登場により、やんちゃでひねくれたキャラクターとして定着し、多くの亜種や偽物が生まれるほどの人気キャラクターとなりました。

擬古猫は、あやしいわーるどのほぼ全ての掲示板に出没し、圧倒的な投稿量を誇っていました。その行動様式は、リアルタイムのコミック劇のようなものでした。

擬古猫のキャラクター設定

擬古猫は、あやしいわーるど上を漂う情報であり、実体のない架空の猫として認識されています。電子掲示板の閲覧によって繁殖し、閲覧者の脳内で分裂・変異を繰り返します。

その容姿は変幻自在で、板の雰囲気によって変化します。容易にコピー&ペーストできることから、多くの亜種が存在します。

擬古猫の投稿者自身を「依代」と呼び、複数の掲示板に同時に書き込むことを「分身」と表現しています。「ぎこねこ」という幼女の姿をした亜種も存在します。

「帰依」は、擬古猫が空白に戻る現象で、匿名掲示板における匿名性の高まりと、固定ハンドルネームに対する反感から生まれた概念と言えます。

権利関係

文字絵は容易に改竄できるため、権利関係は複雑です。現状では、明確な著作権者がいないため、商業利用もほぼ自由ですが、異論も多く存在します。

あやしいわーるどから2ちゃんねるへ

2000年、あるユーザーによって2ちゃんねるに持ち込まれた擬古猫は、そこで爆発的な人気を博しました。

あやしいわーるどでは「(ﾟДﾟ)」などの顔文字が流行しており、掲示板荒らしにも利用されていましたが、2ちゃんねるでは擬古猫はキャラクターとして定着し、様々なバリエーションが生まれました。

擬古猫に関わる事件

2000年の西鉄バスジャック事件では、擬古猫の文字絵がマスコミで報道され、2ちゃんねるの注目度が高まりました。これにより、多くのあやしいわーるどユーザーが2ちゃんねるに移行し、擬古猫もその波に乗りました。

2002年には、さっぽろ雪まつりでギコ猫の雪像が作られました。同年、タカラによるギコネコの商標登録事件が発生しましたが、擬古猫は静観していました。2005年にはエイベックスなどによる商標登録事件が発生しました。

文字絵キャラクターグッズ

ギコネコをはじめとする文字絵キャラクターグッズが多数流通しており、2000年には同人誌即売会などで擬古猫グッズが頒布されました。

2ちゃんねる系の文字絵グッズも盛んに制作され、商業化も進みましたが、著作権の曖昧さを背景に、非公式なグッズも多く存在します。

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