新東京正義乃士

新東京正義乃士

新東京正義乃士（しんとうきょうせいぎのし）は、1980年代中盤に活動した日本のインディーズ・ロックバンドです。「クラシカル・パンク」とも形容されるそのユニークな音楽性は、当時のシーンにおいて異彩を放っていました。後に人気バンド筋肉少女帯に加入し、その音楽的支柱の一人となる三柴理が在籍していたことでも知られています。バンド内では「江戸蔵」あるいは「鉄人三柴」といった名義を使用していました。

彼らのバンド編成は一般的なロックバンドとは一線を画していました。例えば、エレキギターに代わってヴァイオリンが重要なパートを担ったり、ドラムス担当者がキーボード経験しか持たなかったりと、型破りな構成が特徴です。このようなユニークな布陣でありながら、彼らは自分たちの生み出す音楽が、国境を越えて多くの人々に親しまれる「世界の歌謡曲」となることを理想としていました。

活動期間は短く、メジャーシーンに進出することはなかったため、現在その全貌を知るための資料や情報は限られています。特に、当時のオリジナル音源は非常に希少です。これは、後にインディーズレーベル「ナゴムレコード」関連の音源を再リリースする「ナゴム再生委員会」からCD再発の誘いがあったものの、バンド側がこれを辞退したため、公式な復刻盤が存在しないことにも起因します。短命な活動でありながらも、彼らは同時代のインディーズバンド、例えば「腐敗屍体」などからリスペクトされるなど、一部の音楽シーンに強い印象と影響を残しました。

在籍メンバーは時期によって異なり、主に「あつまり」期と「不滅への挑戦」期に分けられます。主なメンバーとしては、ピアノやヴォーカルを務めた三柴理（江戸蔵、鉄人三柴、エディ）、ヴォーカルやドラムス、シンセサイザーを担当したあっぱれトヨひろ（トヨ、恐怖白豚男）、ギターやベースの一之橋City（シティ、山本五十七）、ヴァイオリンのフウ（冷血少女）などが挙げられます。

ディスコグラフィー

発表された音源は限られています。

シングル
『不滅への挑戦』（1985年5月、7インチEP+ソノシート）
収録曲：運のない男、神のなせる業と神髄、時(Time is money)、祖國の改善、人生からす道、ハッタレ力松、円覚寺の異変

アルバム
オムニバスアルバム『あつまり ナゴムオムニバス』（1984年12月）に4曲収録。
収録曲：しらたき弁当、俺は両刀使い、死体のこもれ火、山道と観世音

ビデオ
オムニバスビデオ『ナゴムレコードの黄金時代』（1985年5月）に1曲収録。
収録曲：俺は両刀使い

上記以外にも多数の未発表曲が存在しました。

未収録曲
上半身girl
古風な女
昭和58年最期の叫び
破戒
青春讃美乃曲
二階の太陽
男のDay Breaker
Ready for Good-bye
旅は終わり
暗中模索
ひげ左半分
正義の哲学
正義は戦う
住所まで教えたのに
信仰のモチーフ
浪費の行く末
独白と激励
NIGHT LIGHT

短命なバンドでしたが、その楽曲は後に様々な形で再び世に出ています。特に三柴理自身や、彼が参加するバンドによってセルフカバーされることが多くありました。

楽曲のカバー事例
「祖國の改善」：三柴理のアルバム『AKEBONO』（2017年）で「My Failure」としてインストゥルメンタルカバー。
「死体のこもれ火」：バンド「電車」のアルバム『電車トーマソ』（2001年）でカバー。
「山道と観世音」：声優・宮村優子のアルバム『大四喜』（1999年）に収録。ピアノ演奏は三柴理（江戸蔵）が担当。
「上半身girl」：三柴理のピアノアルバム『Pianism』（2002年）、『ROCKS & CLASSICS』（2021年）でセルフカバー。
「暗中模索」：三柴理のアルバム『ROCKS & CLASSICS』（2021年）でセルフカバー。
* 「Night Light」：三柴理が参加するバンド「特撮」のアルバム『Agitator』（2001年）でカバー。また、『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝 オリジナルサウンドトラック』（2006年）にロングバージョンが収録されたほか、三柴理のピアノアルバム『Pianism II』（2009年）でもセルフカバーされています。

関連するアーティストやレーベルとしては、筋肉少女帯、有頂天、特撮、電車、そして所属していたナゴムレコードなどが挙げられます。新東京正義乃士は、わずかな活動期間ながらも、その特異な音楽性と後世に影響を与えるメンバーの存在によって、日本のインディーズ史において語られるべきバンドの一つです。

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