旧芝離宮恩賜庭園

旧芝離宮恩賜庭園：江戸の趣と現代の静寂が調和する都会のオアシス

東京都港区海岸に位置する旧芝離宮恩賜庭園は、都立庭園として一般に公開されている歴史的な庭園です。その起源は、江戸時代初期、大名屋敷の庭園「楽寿園」に遡ります。その後、宮内庁の管理下にある離宮となり、大正13年（1924年）に東京市へ下賜され、現在の名称で公開されるようになりました。

歴史の重みと変化に富む軌跡

寛永年間（1624～1644年）には、有力大名加藤嘉明の所領となり、その後、大久保家、清水家、紀伊徳川家と所有者が移り変わりました。明治維新後、有栖川宮熾仁親王の邸宅となり、明治8年（1875年）には皇太后宮の別邸として宮内省に収められました。

庭園の創建時期は元禄以前、貞享年間（1684～1688年）に遡ると考えられており、老中・大久保忠朝が小田原藩の庭師に作庭を依頼したと伝えられています。回遊式潮入林泉庭園として造られ、壮大な石組みはないものの、巧みに配置された地形と植栽は江戸時代の優れた庭園様式を今に伝えています。

明治時代には、芝離宮として迎賓館が建てられ、国際交流の場としても利用されました。しかし、大正12年（1923年）の関東大震災で迎賓館などの建造物が焼失。震災後は被災者の避難所として使用され、庭園の景観も損なわれました。その後、復旧工事が行われ、現在の姿がよみがえりました。

昭和8年（1933年）には、明治天皇の聖蹟として史跡指定を受けました。その後、史跡指定は解除されましたが、昭和54年（1979年）には文化財保護法に基づき名勝に指定されています。

庭園の魅力：五感を満たす自然美

旧芝離宮恩賜庭園の見所は多岐に渡ります。四季折々の花々、特に藤棚の藤の花は圧巻です。雪見灯籠や州浜、枯滝などの伝統的な庭園要素も見どころです。

また、歴史を感じさせる石柱は、戦国武将・松田憲秀旧邸の門柱を移築したとされ、茶室の柱として使われたと推測されています。西湖堤は中国杭州の西湖を模したもので、池の中央には大島、中島、浮島といった大小様々な島が点在し、野鳥たちの憩いの場となっています。大山、根府川山、唐津山など、それぞれに由来を持つ築山も存在します。

現代への継承：憩いの場として

現在、旧芝離宮恩賜庭園は、都会の喧騒から離れた静寂の空間として多くの人々に利用されています。庭園内には、弓道場も整備されており、伝統的な弓術の練習場としても機能しています。

季節ごとの花々の開花情報や、庭園ガイド、そして年間パスポート制度など、利用者の利便性を高めるための様々な取り組みもされています。年間を通して、様々なイベントも開催されており、訪れるたびに新しい発見があります。

アクセスも良好で、JR浜松町駅や都営地下鉄大門駅から徒歩圏内です。都会の一角に位置しながら、江戸時代の面影を色濃く残す旧芝離宮恩賜庭園は、歴史と自然を満喫できる貴重な場所です。都会のオアシスとして、これからも多くの人々に親しまれていくことでしょう。

もう一度検索