春道列樹

春道列樹（はるみちのつらき）は、平安時代前期に活躍した官人であり、才能ある歌人でした。彼は、主税頭（あるいは雅楽頭とも伝えられています）を務めた春道新名の息子として生まれ、従六位下壱岐守という官位にまで上り詰めました。

彼の経歴をたどってみましょう。延喜10年（910年）、春道列樹は文章生に任ぜられました。これは、当時、文章道に秀でた若者が登用される重要なポストでした。その後、大宰大典という重要な役職を歴任します。大宰大典は、九州地方の行政を担う重要な官職であり、その経験は彼の幅広い知識と経験を培ったものと思われます。そして延喜20年（920年）、壱岐守に任ぜられました。壱岐守は壱岐国（現在の長崎県壱岐市）の長官であり、地方行政のトップとして手腕を発揮することが期待されました。しかしながら、赴任する前に世を去ったと伝えられています。

春道列樹は、その優れた和歌の才能でも知られていました。彼の作品は、勅撰和歌集である『古今[[和歌集]]』に3首、『後撰和歌集』に2首選出されていることから、当時の歌壇において高く評価されていたことがわかります。特に有名なのが、『小倉百人一首』にも収録されている以下の歌です。

山川に風のかけたる　しがらみは　流れもあへぬ　紅葉なりけり

この歌は、秋の情景を見事に捉えた名歌として知られています。山河を吹き抜ける風、流れに阻まれた紅葉の情景は、見る者の心に深く響くものがあります。この歌からは、自然への深い感性と、繊細な表現力を感じ取ることができます。

『古今[[和歌集]]目録』によれば、春道列樹の経歴は、延喜10年（910年）5月19日の文章生への任官から始まります。この記録には「雪中白鶴」という記述があり、彼が文章生として才能を発揮していた様子が伺えます。時期は定かではありませんが、大宰大典を歴任したのち、延喜20年（920年）正月29日に壱岐守に任ぜられています。しかし、残念ながらその直後に亡くなったと推測されます。

短い生涯ではありましたが、春道列樹は優れた歌人としてその名を残しました。『古今[[和歌集]]』や『後撰和歌集』への入集、そして『小倉百人一首』への選出は、彼の和歌の才能がいかに高く評価されていたかを物語っています。彼の作品からは、自然への深い愛情と、鋭い観察眼、そして繊細な表現力が感じられ、平安時代の歌壇に彩りを添えた重要な歌人の一人と言えるでしょう。彼の残した歌は、現代においても人々の心を捉え続け、平安時代の文化の一端を垣間見させてくれます。短い生涯ながらも、後世に大きな影響を与えた、才能溢れる歌人であったと言えるのではないでしょうか。

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