李靖

李靖（り せい）

李靖（571年 - 649年）は、唐初期に活躍した名将・政治家です。太宗皇帝に仕え、数々の戦役で傑出した軍事的才能を発揮しました。特に突厥征伐での功績は大きく、唐の北辺の安定に大きく貢献しました。衛公に封じられ、その武名は後世にまで轟いています。

生涯

李靖は、京兆郡三原県（現在の陝西省咸陽市三原県）の出身で、隋の高官の家系に生まれました。若い頃から兵法に関心を抱き、研究に没頭しました。隋末の混乱期には、李淵（後の唐の高祖）に仕え、その才能を見出されます。李淵が挙兵を計画していることを察知し、煬帝に密告しようとしましたが、李淵に捕らえられました。処刑されそうになった際、李靖は李淵に対し、自らの才能を活かすように訴え、その言葉に感銘を受けた李世民（後の太宗）によって助命され、その配下となりました。

李世民の幕僚として、唐の統一戦争で数々の献策を行い、その軍事的才能を発揮します。王世充との戦いや、江南の蕭銑との戦いでは、重要な役割を果たし、唐の勝利に貢献しました。

突厥征伐

貞観3年（629年）、太宗皇帝は、北方の脅威であった突厥に対抗するため、李靖を派遣します。李靖は、わずか3千の騎兵を率いて突厥の本陣を奇襲し、敵を混乱させます。さらに、離間策を用いて敵の内部を崩壊させ、突厥の頡利可汗を降伏させることに成功しました。この功績により、李靖は唐の英雄として称えられました。

吐谷渾征伐

貞観8年（634年）、西部の吐谷渾が唐に反旗を翻すと、李靖は再び出陣します。老齢を理由に太宗は別の将軍を任用しようとしましたが、李靖は自ら志願しました。焦土作戦で李靖を苦しめましたが、李靖は敵の隙を見抜き追撃、伏允を討ち、吐谷渾を滅ぼしました。この功績により、李靖の武名はさらに高まりました。

晩年は宰相を務め、唐の政治に貢献しました。太宗皇帝からの信頼は厚く、その才能は高く評価されました。

戦術

李靖の戦術は、騎兵の機動力を活かした奇襲戦法を基本としていました。敵の予想を覆す場所から攻撃を仕掛け、混乱に乗じて敵を殲滅するという戦法は、敵よりも少ない兵力でも勝利を収めることを可能にしました。敵の退却方向を予測して伏兵を配置する戦術眼は、当時の武将の中でも突出していました。

李靖の兵法は、『李靖兵法』や『李衛公問対』にまとめられ、後世の兵法に大きな影響を与えました。特に『李衛公問対』は、武経七書の一つとして、兵法を学ぶ者にとって必読の書となっています。

人物

李靖は、冷静沈着で、常に状況を的確に判断する能力に長けていました。また、部下を大切にし、その能力を最大限に引き出すことに長けていました。その人柄は多くの人々に慕われ、唐の繁栄に大きく貢献しました。

関連項目

武経七書
李衛公問対
托塔李天王

伝記資料

『旧唐書』巻67 列伝第17「李靖伝」
* 『新唐書』巻93 列伝第18「李靖伝」

もう一度検索