東京九州フェリー

東京九州フェリー株式会社：快適な船旅と地域活性化を両立する海運事業

東京九州フェリー株式会社は、福岡県北九州市門司区に本社を置く、SHKライングループに属する海運会社です。2019年の設立以来、神奈川県横須賀港と福岡県北九州市新門司港を結ぶフェリー航路を運航し、関東と九州を海上輸送で繋ぐ重要な役割を担っています。

モーダルシフトと新たな航路開拓

本社の設立は、SHKライングループが推進するモーダルシフト政策、すなわち、陸上輸送から海上輸送への転換という背景があります。増加する海上輸送需要に応えるため、関東と九州を結ぶ新たな高速フェリー航路の計画が2018年に発表され、その実現に向けて東京九州フェリーが設立されました。これは、1970年代に営業されていた東九フェリー（現・オーシャン東九フェリー）以来となる、SHKラインによる関東～九州間の直通航路の復活でもあります。

競争優位性：充実の船内設備と地域グルメ

東京と北九州間には、航空機、新幹線、高速バスなど既存の交通機関が既に存在します。東京九州フェリーは、それらとの差別化戦略として、快適な船旅を提供することに重点を置いています。

単なる移動手段ではなく、船内での滞在時間を豊かに過ごすための様々な工夫が凝らされています。広々とした客室、24時間利用可能なシャワールーム、露天風呂、サウナ、カラオケルーム、ペットルーム、ドッグランなど、多様なニーズに対応する設備が充実しています。さらに、プラネタリウムや映画の上映なども行われ、エンターテインメント性の高いサービスも提供しています。

また、船内レストランでは、横須賀や北九州といった地域の名物料理が提供されます。地元の食材を使った料理は、乗客にとって旅の楽しみをさらに高める要素となっています。デッキでのバーベキュー（夏季）なども企画され、多様な客層を取り込もうとする姿勢が伺えます。

就航までの道のり：地元との調整と課題

2019年4月の会社設立後、三菱重工業長崎造船所にてフェリー2隻（「はまゆう」、「それいゆ」）の発注、横須賀港フェリーターミナルの建設など、就航に向けた準備が着々と進められました。しかし、その過程では、地元の港湾運送業者からの反発も発生しました。

フェリーターミナル建設予定地である横須賀新港埠頭は、自動車輸出拠点としての機能も担っており、フェリー就航による影響を懸念する声が地元業者から上がりました。具体的には、自動車運搬船の荷役に支障が出ること、当初計画と異なる埠頭への誘致であることなどを理由に、反対運動が展開され、裁判沙汰に発展するケースもありました。

これらの課題に対し、東京九州フェリーと横須賀市は、協議を重ね、最終的に合意に至りました。合意内容には、港湾施設改良、使用料減免、タグボートによる荷役船の待避費用補助などが含まれており、地元業者との関係改善に繋がるものとなりました。

運航状況と今後の展望

2021年7月1日の就航以来、東京九州フェリーは、横須賀～新門司航路を安定的に運航しています。当初は新型コロナウイルス感染症の影響で一部施設の利用を制限していましたが、現在は通常運行に戻っています。

旅客定員の多い「すずらん」「すいせん」を一時的に導入するなど、需要に合わせて船舶の変更を行い、利用客の利便性向上にも努めています。今後、需要の動向を見ながら、より一層のサービス向上、そして地域活性化への貢献を目指していくことでしょう。

船舶概要

現在、東京九州フェリーでは、「はまゆう」と「それいゆ」を主力船として運用しています。両船とも三菱重工業長崎造船所建造で、旅客定員268名、車両積載数はトラック154台、乗用車30台です。一方、旅客定員の多い「すずらん」「すいせん」は、ドック代船として一時的に運用されたり、繁忙期に投入されるなど柔軟な運用が行われています。

東京九州フェリーは、今後も快適な船旅を提供し続け、人々の移動手段としての役割だけでなく、地域社会に貢献する存在として発展していくことが期待されます。

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