松平定英

松平 定英の生涯とその治世

松平 定英（まつだいら さだひで）は、江戸時代中期において伊予国松山藩の第5代藩主として名を馳せた大名です。彼は松平家の宗家にあたる定勝系久松松平家の6代目であり、通称は刑部。官位としては従四位下・隠岐守を持つという地位にありました。

生まれと家族背景

定英は第4代藩主であった松平定直の三男として生を受けました。母は側室の光樹院殿で、彼女は渡部氏の出身です。幼名は百助と呼ばれていました。定英は、長兄の定仲や次兄の鍋之助が若くして亡くなったことにより、嫡子としてその後を受け継ぐことになります。

宝永7年（1710年）、彼は従五位下・飛騨守に任命され、享保3年（1718年）には江戸から松山藩の世嗣として帰国しました。帰国後すぐに松山城の二ノ丸に入城し、享保5年（1720年）に父が他界したことにより15万石を継承しました。家督を承継した際には、父の遺志に従って弟の定章に内分1万石を分与しました。これにより、松山新田藩が誕生したのです。

治世と困難

享保7年（1722年）には従四位下に晋昇しましたが、彼の治世は非常に厳しいものでした。特に享保17年（1732年）に起こった享保の大飢饉は彼の領地を猛撃しました。この飢饉は長雨の後にウンカが大量発生したことが原因であり、その結果、松山藩の農民は収穫ゼロの状況に陥りました。領民は極度の飢えに苦しみ、死亡者は3500人に達しました。これは全国規模で見ると、餓死者の約三割に相当します。その中には「伊予の三農」とも称される筒井村の農民作兵衛も含まれていたと言われています。

逆に、藩士たちには一人の死者も出なかったため、定英は領民に対する厳しい政策が問題視されました。この結果、幕府から謹慎処分を受けることとなります。翌年の4月19日に処分は解かれますが、5月21日には情緒不安定になり江戸松山藩邸で気絶し、そのまま帰らぬ人となりました。享年わずか38歳でした。

遺言と埋葬

定英の法号は天楽院殿前隠州従四位下奏誉尊勝咸然大居士とされ、遺体は三田済海寺にて火葬され、その遺骨も同寺に埋葬されました。遺髪は松山大林寺に送られ、法要が行われました。その後、藩主の墓が江戸に建立され、遺髪は松山に送られる方針が取られるようになりました。

系譜

定英の家族は、父である松平定直（1660年 - 1720年）、母の光樹院殿（側室、渡部氏出身）、正室は島津綱貴の娘であるお栄（後の信解院殿）です。彼には長男として定喬（1716年 - 1763年）と次男の定功（1733年 - 1765年）がいました。

定英はその波乱に満ちた生涯を通じて、江戸時代の歴史に大きな影響を与えましたが、飢饉と政務の厳しさによって、藩主としての責任が重くのしかかりました。

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