栗田工業

栗田工業株式会社（Kurita Water Industries Ltd.）

栗田工業株式会社は、日本の水処理分野におけるリーディングカンパニーであり、この分野の専業企業としては国内最大手として知られています。東京都中野区に本社を構え、東京証券取引所のプライム市場に上場しています。同社の主要な事業は、半導体や液晶といった先端産業の製造プロセスに不可欠な超純水をはじめとする高度な水処理装置や、各種水処理薬品の開発・製造、そしてそれらを組み合わせた水処理システムの提供にあります。

設立と歴史

その起源は1949年（昭和24年）、兵庫県神戸市で誕生したことに遡ります。創業者である栗田春生氏は、旧日本海軍で機関士官として培った技術と経験を活かし、企業の礎を築きました。創業当初は、海軍での経験に根差したボイラー用の清浄剤、いわゆる清缶剤の製造販売から事業を開始しました。

1950年代に入ると、水処理技術の可能性に着目。1953年（昭和28年）にはイオン交換樹脂を用いた純水製造装置を皮切りに、水処理装置事業へと大きく舵を切りました。その後、事業の拡大に伴い、1956年（昭和31年）には本社を大阪市に移転。1961年（昭和36年）には東京証券取引所および大阪証券取引所の第2部に上場を果たし、翌1962年（昭和37年）には両取引所の第1部に指定替えとなるなど、企業規模を拡大していきました。

本社機能は大阪から東京へと移り、1969年（昭和44年）には東京と大阪の二本社制を採用。1974年（昭和49年）に東京本社ビルを建設し、1983年（昭和58年）には本社機能を東京都新宿区に統合しました。さらに2012年（平成24年）には現在の所在地である東京都中野区に移転しています。

研究開発体制も時代と共に変化し、神奈川県横浜市に総合研究所を設立したのを皮切りに、厚木市、栃木県野木町へと拠点を広げました。その後の再編を経て、現在は東京都昭島市に最新の研究開発拠点「クリタイノベーションハブ」を構え、未来の水処理技術の創造に取り組んでいます。

社名の「栗田」は創業者の苗字に由来しますが、現在、創業者一族との資本的な関係はありません。また、同名の企業が各地に存在しますが、それらとは関連性のない独立した企業です。

事業内容と製品

栗田工業の事業領域は多岐にわたりますが、その中心は水処理に関するものです。

プラント事業: 工場や発電所などで使用される用水の処理システムや、排水を浄化・再利用するためのプラントを提供します。特に半導体工場向けの超純水製造システムや、排水から有用な水を回収する装置などに強みを持ちます。
水処理薬品事業: ボイラーの腐食防止やスケール抑制、冷却水の効率維持、工場排水の凝集沈殿などを目的とした様々な水処理薬品を開発、製造、供給しています。
土壌・地下水浄化事業: 汚染された土壌や地下水の浄化に対し、浄化技術を提供し、環境修復に貢献しています。
その他: これらの主軸事業に加え、新エネルギー関連など、水処理技術を応用した新たな分野への取り組みも行っています。

主要な取扱製品としては、超純水製造システム、各種用水処理装置、排水回収装置といった装置類に加え、ボイラ薬品、冷却水薬品、排水処理薬品などの薬品類があります。

技術開発とグローバル展開

水処理における高度な技術力は同社の大きな強みです。常に変化する産業ニーズや環境規制に対応するため、研究開発への投資を積極的に行っています。最新の研究開発拠点である「クリタイノベーションハブ」は、オープンイノベーションを推進する場としても機能しています。

海外においても事業を展開しており、主にグループ会社を通じて世界各地で水処理ニーズに応えています。

社会との関わり

企業活動に加え、社会への広報活動として、かつては水に関する短編映画を制作した実績もあります。『水のデザイン』や『水の開拓者』といった作品は、水処理技術の重要性や企業の取り組みを視覚的に伝える試みであり、現在ではNPO法人科学映像館のウェブサイトを通じて無償で視聴できます。また、スポーツ活動への支援も行っており、ジャパンラグビーリーグワンに所属するラグビー部「クリタウォーターガッシュ昭島」は同社のチームです。

水処理の総合企業として、栗田工業は産業活動を支える基盤技術を提供するとともに、環境保全にも貢献することで、持続可能な社会の実現に寄与しています。

もう一度検索