桂吉坊

桂吉坊：伝統芸能への造詣が深い実力派落語家

桂吉坊(かつら きちぼう)は、1981年8月27日生まれの日本の落語家です。本名は津田恵(つだ めぐみ)。兵庫県西宮市出身で、大阪府立東住吉高等学校芸能文化科卒業後、1999年1月10日に桂吉朝に入門しました。同年3月には「岡町落語ランド」で初舞台を踏みます。

入門後は、着実に芸を磨き、2006年1月からは若手落語家集団『平成噺し座』に所属。このグループは東西、一門、所属事務所の枠を超えた若手落語家が集う集団で、上方落語界には真打制度がないものの、二つ目しか入れないことから、東京では真打として扱われるほどの存在でした。2008年4月に『平成噺し座』を卒業しています。

落語家としての活動と並行して、2007年には舞台「地獄八景‥浮世百景」に俳優として出演するなど、活動の幅を広げています。また、2008年には朝日新聞社の月刊誌「論座」で「吉坊が聞く 芸の世界」を連載。伝統芸能への造詣の深さから、歌舞伎や能、文楽などの古典芸能に精通しており、落語においても歌舞伎を題材とした芝居噺を得意としています。

桂吉坊の伝統芸能への関心の深さは並々ではありません。米朝一門らしく、太鼓や笛はもちろん、三味線や長唄も習得。さらに、現在も能楽(謡や小鼓)を個人的に習っており、能楽の催しでは司会を務めることもあります。歌舞伎役者や他の伝統芸能の役者とも親交が深く、そのネットワークは彼の活動の幅を広げる上で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

彼のエピソードとして、大師匠である桂米朝宅での内弟子時代、童顔だったことから近所の店では米朝の孫と間違われたという逸話があります。また、中学生の頃に落語家になりたいと親に相談したところ、「なんでわざわざアホになるんだ」と反対されたというエピソードも有名です。さらに、上方落語界きっての酒豪としても知られています。

数々の賞を受賞するなど、その実力は折り紙付きです。主な受賞歴としては、2008年 第3回繁昌亭大賞輝き賞、2010年 第47回なにわ芸術祭奨励賞、2011年 第29回咲くやこの花賞、2012年 第49回なにわ芸術祭新人賞、2014年 第9回繁昌亭大賞奨励賞、そして2023年には第17回繁昌亭大賞を受賞するなど、輝かしい実績を残しています。

また、著書『桂吉坊がきく藝』(朝日新聞出版)では、「吉坊が聞く 芸の世界」の連載をまとめた内容が掲載されています。テレビ出演としては、2021年6月5日放送のBS朝日「御法度落語 おなじはなし寄席 2時間スペシャル」で「猫の茶碗」を演じています。

桂吉坊は、その卓越した落語の技術、深い伝統芸能への知識、そして持ち前の明るさと親しみやすさで、多くの人々を魅了し続けている落語家です。今後も彼の活躍から目が離せません。

もう一度検索