桂福丸

桂 福丸

桂福丸（かつら ふくまる）は、1978年4月29日に兵庫県神戸市東灘区で生まれた上方落語家です。本名は中野正夫。師匠は四代目桂福團治で、出囃子には「銀のぴらぴら」を使用しています。学歴と国際感覚を併せ持つ異色の噺家として知られ、古典落語はもとより、新しい試みにも意欲的に取り組んでいます。

幼少期から学生時代

落語との出会いは小学生の頃にさかのぼります。テレビ番組を通じて上方落語の世界に触れ、その魅力に引き込まれました。勉学にも励み、関西有数の進学校として知られる灘中学校・高等学校に進学。中学時代には硬式テニス部で活躍し、団体戦で全国大会に出場してベスト16に進出するなど、スポーツの分野でも優れた才能を示しました。自宅が学校から非常に近かったこともあり、学生生活を送る上で地の利を得ていました。高校在学中には阪神・淡路大震災が発生し、自宅が半壊するという大きな被害を受け、ご家族と共に避難生活を送るという辛い経験もしています。

学生時代を通じて、文化祭や体育祭などで舞台に立つ機会があり、表現することへの関心を深めました。この経験から、大学に進まずに舞台の仕事をしたいと考えるようになります。しかし、ご両親の説得もあり、京都大学法学部に進学。大学生活では舞台活動への思いを持ち続け、一般的な就職活動は行いませんでした。

落語家への道の模索

京都大学卒業後、舞台の世界に進むべく様々な道を模索します。アルバイトで生計を立てながら、お笑い芸人の養成所である吉本総合芸能学院（NSC）に入学しますが、漫才というスタイルになじめず、わずか1年で中退しました。その後、外国人パフォーマーから英語での即興演劇などを学ぶ機会を得ます。この経験を通じて、パフォーマーから勧められたことがきっかけで英語落語の存在を知り、深く関心を持つようになります。

英語落語を志す上で、桂枝雀と共に英語落語を創始したことで知られる山本正昭氏が代表を務める英会話学校に通い、本格的に学び始めました。山本氏が主催する英語落語の公演に出演する機会を得て、アメリカのテネシー州やペンシルベニア州の学校で公演を行うなど、国際的な舞台経験も積んでいます。

四代目桂福團治に入門

落語家への道は、意外な縁から開かれました。英語落語に取り組む中で、アルバイト先の支配人が四代目桂福團治師匠と知り合いだったことから、紹介を受ける機会を得ました。そして、28歳となった2007年2月、四代目桂福團治に正式に入門。入門からわずか1ヶ月後の2007年3月9日には、アプラホール高石の高座で「桃太郎」を演じ、初舞台を踏むという異例の早さで落語家としての一歩を踏み出しました。

独自の活動と評価

桂福丸は、古典落語を守りつつ、新しい表現方法にも積極的に挑戦しています。高校の先輩を通じて、バイオリニスト高嶋ちさ子の父である音楽プロデューサーの高嶋弘之氏と知り合った縁から、2013年からは落語とクラシック音楽を融合させた公演「寄席CLASSICS」を共同で開催。この企画は、異分野のコラボレーションとして注目を集め、多くの観客から好評を得ています。

その実力と意欲的な活動は高く評価されています。2017年には文化庁芸術祭新人賞を受賞し、若手落語家としての実力を認められました。翌2018年には花形演芸大賞銀賞を受賞。さらに2023年には、上方落語の定席である天満天神繁昌亭の奨励賞である第18回繁昌亭奨励賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。

その他の活動

メディアへの露出も多く、テレビ番組「チームベイコム」内のコーナー「福丸がゆく」にはレギュラー出演しています。また、クイズ番組「パネルクイズ アタック25」に出演し、トップ賞を獲得するなど、その知性も披露しました。ラジオやウェブテレビへの出演経験もあります。2020年にはマクドナルドのアルバイト募集広告に出演するなど、活動の幅を広げています。

著作として『怒られ力 新社会人は打たれてナンボ!』（明治書院）があり、自身の経験を踏まえたメッセージを若者に向けて発信しています。

好きな噺家として、師匠である四代目桂福團治のほか、三代目桂文我、十代目金原亭馬生、三代目春風亭柳好といった、いずれも個性豊かな噺家たちの名前を挙げており、多様な落語観を持っていることがうかがえます。

異色の経歴を活かし、伝統と革新を融合させる桂福丸は、今後の上方落語界においてさらなる活躍が期待される噺家の一人です。

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