武丁

武丁：殷王朝を復興させた王

武丁（ぶてい）は、古代中国の殷王朝における第22代の王であり、その治世は殷の歴史において重要な転換期となりました。彼は殷墟（いんきょ）（大邑商）の地に都を定め、政治、軍事、文化の各方面で顕著な業績を残しました。特に、甲骨文がこの武丁の時代から見られるようになったことは、古代中国の歴史研究において重要な意味を持ちます。

軍事的成功と領土拡大

武丁の治世における特筆すべき事績の一つに、鬼方（きほう）という異民族との戦いがあります。『易経』によれば、彼は3年もの歳月を費やしてこの異民族を討伐し、殷の勢力を四方へと拡大しました。また、彼の夫人である婦好（ふこう）も自ら軍を率いて敵国を征伐したと伝えられており、武丁の軍事的な成功は、彼自身の指導力だけでなく、夫人の協力にも支えられていたことが伺えます。

賢人・傅説との出会いと王朝の復興

文献資料によれば、武丁は太子時代に賢人である甘盤（かんぱん）から学問を学びました。彼は、盤庚（ばんこう）の後に衰退した殷を復興させようと考えていましたが、そのための適切な補佐役を見つけることができずにいました。即位後3年間は自ら政治に口出しをせず、賢人の出現を待つことにしました。ある夜、彼は説（えつ）という名の聖人が現れる夢を見ましたが、群臣の中にはそのような人物はいませんでした。そこで、武丁は方々に人を遣わして夢に現れた人物を探させたところ、道を作る労役者の中にその人物がいることが判明しました。武丁が彼と話してみると、彼はまさに夢に見た聖人であったため、傅（ふ）という姓を与え、傅説（ふえつ）と名付けました。傅説は武丁の補佐役として才能を発揮し、殷王朝の復興に大きく貢献したとされています。

子孫と後世への影響

武丁には、祖己（そき）、祖庚（そこう）、祖甲（そこう）という3人の息子がいました。卜辞（ぼくじ）によれば、これらの息子たちはこの順に即位したとされていますが、『史記』などの文献では、祖己は即位していないことになっています。武丁の治世は、殷王朝の最盛期の一つとして知られており、彼の業績は後世に大きな影響を与えました。

武丁を主人公とした作品

* 宮城谷昌光 『沈黙の王』 – 言語障害のある子昭（高宗・武丁）は言葉を求め、説に会う。そして、漢字を生み出す。

武丁は、殷王朝の歴史において重要な役割を果たした王であり、彼の治世は、軍事的成功、賢人との出会い、そして文化的な発展によって特徴づけられます。彼の業績は、古代中国の歴史研究において重要な意味を持ち続けています。

もう一度検索