武田尾駅

武田尾駅：歴史と自然に抱かれた山間の駅

兵庫県宝塚市玉瀬の静かな山間部に位置する武田尾駅は、西日本旅客鉄道（JR西日本）福知山線の駅です。駅番号はJR-G59。宝塚駅の被管理駅として無人駅ながら、ICOCAなどのICカードが利用でき、アーバンネットワークにも含まれています。

歴史：武庫川沿いの単線から高架駅へ

福知山線は、開業当初は武庫川沿いを走る単線非電化路線でした。列車交換に長時間を要するなど、運行面での課題がありました。1980年代の複線電化計画に伴い、現在の新線への切り替えが行われました。これにより、大阪市近郊の高速都市間輸送網の一部となり、停車列車の本数も増加。武田尾駅もその恩恵を受け、利便性が向上しました。

具体的な歴史的変遷は以下の通りです。

1899年（明治32年）1月25日: 阪鶴鉄道の有馬口駅（現在の生瀬駅）－三田駅間の延伸開業に伴い、武田尾駅が開業。旅客・貨物の取り扱いを開始しました。当初の駅舎は現在の場所とは異なり、島式ホーム1面2線でした。
1907年（明治40年）8月1日: 阪鶴鉄道の国有化により、帝国鉄道庁に移管されました。
1909年（明治42年）10月12日: 線路名称制定により、阪鶴線の駅となりました。
1912年（明治45年）3月1日: 線路名称改定により、福知山線に所属変更されました。
1971年（昭和46年）3月1日: 貨物および荷物の取り扱いが廃止されました。
1986年（昭和61年）8月1日: 生瀬駅－道場駅間の新線切り替えに伴い、現在の高架駅へと移転。旧駅跡は道路として整備されました。同年11月1日には電化され、無人駅となりました。
1987年（昭和62年）4月1日: 国鉄分割民営化により、JR西日本へ移管されました。
1988年（昭和63年）3月13日: 路線愛称が「JR宝塚線」となり、当駅もその愛称を使用開始しました。
1998年（平成10年）1月19日: 自動改札機が設置されました。
2003年（平成15年）11月1日: ICOCAサービスが開始されました。
2011年（平成23年）3月8日: 接近メロディーが導入されました。
2018年（平成30年）3月17日: 駅ナンバリングが導入されました。
2020年（令和2年）3月14日: ダイヤ改正により、区間快速の停車駅となりました。
2028年度（予定）: エレベーターが設置される予定です。

駅構造：高架駅ならではの眺望

武田尾駅は、相対式2面2線のホームを持つ高架駅です。分岐器や絶対信号機がないため停留所に分類されます。ホームの一部は橋梁、一部はトンネル内にあるというユニークな構造です。武庫川にダム建設が計画されていた経緯もあり、橋梁は水面からかなり高い位置にあります。改札口は1ヶ所のみで、自動券売機、ICOCA対応の自動改札機が設置されています。無人駅であるため、エレベーターやエスカレーターは設置されていませんでしたが、2028年度の完成を目指して設置工事が計画されています。

利用状況と周辺環境：温泉とハイキングコース

武田尾駅は、周辺に民家や商店が少ない山間部に位置しています。しかし、徒歩圏内に武田尾温泉があり、観光客の利用も見られます。旧福知山線の廃線跡は、ハイキングコースとして整備されており、多くの観光客が訪れます。特に、行楽シーズンには利用客が増加し、臨時で駅員が配置されることもあります。

駅周辺には、武田尾温泉のほか、宝塚市が管理する里山公園「桜の園」、武田尾公会堂、兵庫県道327号切畑道場線、新名神高速道路宝塚北サービスエリア、神戸水道などがあります。

また、阪急バスが乗り入れており、周辺地域へのアクセスを提供しています。

旧線：隠れたハイキングコース

現在の駅の真下には、福知山線の旧線が走っていました。山間部の狭いV字谷を通る旧線は、建設や保線作業が非常に困難な区間でした。1986年の新線切り替えにより廃止された旧線は、当初は立入禁止でしたが、口コミでハイキングコースとして知られるようになり、多くの利用者を集めました。しかし、安全面での懸念から一時閉鎖され、再整備の上、正式な遊歩道として一般開放されています。生瀬駅～武田尾駅間の約4.7kmのコースは、美しい自然を満喫できる人気のスポットです。

隣の駅

西宮名塩駅
道場駅

もう一度検索