準児童ポルノ

準児童ポルノとは

準児童ポルノとは、児童ポルノに準じるものとして扱われる表現物であり、具体的には「被写体が実在するか否かを問わず、18歳未満の児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したもの」を指します。仮想児童ポルノ、みなしポルノとも呼ばれることがあります。

この概念は、2008年に日本ユニセフ協会などが共同で行った「なくそう! 子どもポルノキャンペーン」で初めて提唱されました。アニメ、漫画、ゲームソフトなどのキャラクターや、18歳以上の人物が児童を演じる場合も含まれると定義されています。

世界の動向

ニュージーランド

ニュージーランドでは、1993年の法律により児童の性行為や裸体を描いた映像・出版物を「不適切なもの」として禁止しており、2004年にはアニメ作品が児童ポルノと認定され発禁処分を受けています。

イギリス

イギリスでは、2009年の法律により、児童の性器や性行為を描写した漫画やCGも規制対象となり、2010年4月から刑事罰の対象となっています。

カナダ

カナダでは、児童ポルノを全面的に規制しており、準児童ポルノに該当する作品も「道徳を堕落させる罪」として刑事罰の対象となっています。

アメリカ合衆国

アメリカでは、かつて準児童ポルノを全面規制していた法律が違憲判決を受けましたが、2003年に新たな法律が施行され、最高裁が定義するわいせつに該当する「バーチャル児童ポルノ」も規制対象となりました。

韓国

韓国では、2011年に制定された法律により、児童・青少年と認識されうる表現物、または性的行為を表現するフィルムなども禁止されており、準児童ポルノは「仮想の児童・青少年ポルノ」として認識されています。

日本での動向

日本では、2016年現在、政府が「実在の児童を描写したものに限定」という見解を示しており、架空の児童を扱ったポルノ作品は規制対象外です。しかし、内閣府の調査では、架空の児童の性行為を描いた作品を規制すべきとする意見が大勢を占めています。

推進派の動向

なくそう! 子どもポルノキャンペーン

2008年に日本ユニセフ協会などが中心となって行われたこのキャンペーンでは、準児童ポルノへの法規制の適用と、児童ポルノの単純所持禁止が求められました。海外では児童性的虐待を描いたアニメや漫画も禁止されており、日本でも同様の規制が必要と主張されています。

ただし、ECPAT関西は、実在しない子どもの「絵」のポルノ規制には反対の立場を示しており、警察庁の外郭団体であるインターネット・ホットラインセンターも、現行法では対応が困難だと主張しています。

アグネス・チャン氏は、実在しない子どもも対象に含む「アニメやゲーム、漫画での子どもたちのポルノと性的搾取」の違法化を訴えています。

日本ユニセフ協会は、児童を性的対象とする価値観を醸成する点でコミックと写真に区別はないとしています。

反対派・慎重派の動向

2008年には、創作物の規制や単純所持規制に反対する署名活動が行われ、著名な漫画家や学者などが名を連ねました。日本ペンクラブや日本弁護士連合会も創作物の規制に反対する声明を出しています。

女性クリエイターらが設立した「女子現代メディア文化研究所」は、国連女子差別撤廃委員会に対して、架空の性的暴力を取り締まるよりも、実在する女性への人権侵害に取り組むべきだと提言しています。

法改正に関する動き

自民党

自民党は、2008年に単純所持の禁止を盛り込んだ法改正案を提出しましたが、継続審議となっています。女性議員を中心に、児童ポルノの単純所持の違法化や、漫画・アニメ・ゲームの規制に積極的な意見が出ています。

公明党

公明党は、創作物の規制に関して「禁止行為とすることが望ましい」との判断を示していますが、性犯罪との因果関係を示すデータの必要性を主張しています。

社民党

社民党は、表現の自由を擁護する立場から、児童ポルノの単純所持の違法化に反対しています。漫画などの規制には慎重な姿勢を示しています。

日本共産党

日本共産党は、児童ポルノの単純所持違法化に反対しており、創作物規制にも慎重な姿勢を示しています。ただ、漫画やアニメにおける「非実在児童ポルノ」が、子どもを性的な対象として見る誤った観念を広める可能性も指摘しています。

民主党

民主党は、単純所持の禁止に合意した一方で、党内には表現規制に慎重な議員も存在します。単純所持禁止を訴えるキャンペーンに参加する議員もいれば、アダルトゲームの規制を求める議員もいます。

準児童ポルノ（創作物）の論点と問題

定義

準児童ポルノの定義は曖昧であり、規制が強化された場合、単なる裸の描写も規制対象になる可能性があると指摘されています。法学界では、仮想児童ポルノの規制に否定的な見解が多く、情報学の観点からは、実在する児童の人権侵害を伴うものだけを児童ポルノとすべきだとの意見もあります。

定義年齢

18歳未満の児童の外見を有するものを対象とする定義に対し、「18歳以上の人物が18歳未満を演じた」ポルノグラフィが規制対象に含まれる可能性が懸念されています。漫画やアニメのキャラクターは年齢不詳の場合が多く、18歳以上か否かの判断が困難です。また、人間以外の種族が登場する作品もあり、児童の定義がさらに曖昧になっています。

表現の自由

準児童ポルノの規制は、日本国憲[[法]]で保証された表現の自由を侵害する恐れがあり、漫画やアニメ、ゲームなどの創作物に対する過剰な規制は、表現の自由の侵害につながる恐れが大きいと指摘されています。

性差別意識の助長の懸念

準児童ポルノは、児童を性的な対象として扱うことへの懸念があり、女性差別的な制度を助長するとの批判もあります。一方、社会学者の宮台真司は、ゾーニングによる対処を提唱しており、過剰な規制には反対の立場を表明しています。

集団としての子供の人権

準児童ポルノを規制すべき理由として、集団としての子供の権利を守るという主張も存在します。たとえフィクションであっても、ポルノが特定の集団への差別を助長するとの懸念が表明されています。

保護法益の問題

児童ポルノ法は、実在する児童の保護を目的とするため、架空の児童を扱った創作物の規制には慎重な意見があります。しかし、社会法益へと重点を移すことを検討する必要性を指摘する意見も出ています。

性犯罪との因果関係

性犯罪との因果関係を肯定する説がある一方で、因果関係は不明確であり、フィクションをスケープゴートにするべきではないとの意見も存在します。警察庁の有識者会議では、「大勢の目に触れること自体が問題」との意見も出ていますが、日本ユニセフ協会は根拠となるデータが乏しいと認めています。

表現規制による萎縮効果

準児童ポルノの規制は、日本の漫画、アニメ、ゲーム産業を萎縮させる可能性があると懸念されています。

現行法との関係

現行のわいせつ物陳列罪でも、ポルノグラフィの取り締まりは可能ですが、範囲が狭すぎるという指摘があります。

冤罪の懸念

単純所持が禁止された場合、故意に児童ポルノを送付することで冤罪を招く可能性や、児童ポルノを蓄積するコンピュータウイルスによって、大量の冤罪逮捕者が発生する危険性が指摘されています。

まとめ

準児童ポルノを巡る議論は、表現の自由や児童の人権保護、性犯罪との関連性など、多岐にわたる論点が複雑に絡み合っています。法改正の動きや、各方面からの意見を踏まえ、社会全体でより慎重な議論を重ねていく必要があるでしょう。

脚注

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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