無添加

無添加（むてんか）

特定の化学物質や成分が配合・使用されていない状態を示す言葉です。英語では「additive-free」などと訳されます。しかしながら、「何が無添加であるか」についての法律上の統一された明確な規定は存在しません。

背景と広まり

「無添加」という言葉が広く使われるようになった背景には、第二次世界大戦以降の科学技術の発展に伴い、自然界には存在しない化学合成された物質が様々な製品に大量に使用されるようになったことがあります。これらの物質、特に食品添加物や化粧品成分、建築材料などに含まれる化学物質の安全性について疑問や不安を持つ消費者が増えました。毒性、発癌性、内分泌をかく乱する作用などが指摘される物質や、人体や環境中で分解されにくく蓄積しやすい性質を持つもの、複数の物質が組み合わさった際の複合的な影響などが懸念されています。こうした消費者の「より自然なもの」「より安全と思われるもの」を求める声に応える形で、特定の成分を使用しないことをアピールするマーケティング表現として「無添加」という表示が様々な商品に用いられるようになりました。

安全性に関する注意点

「無添加」と表示されているからといって、必ずしもその製品の安全性が高いとは限りません。これは、化学合成物質の代わりに、安全性が十分に確認されていない天然由来の成分が使用されるケースも少なくないためです。また、アレルギー反応を引き起こす可能性のある天然成分も存在します。したがって、「無添加」表示はあくまで特定の物質が使用されていないことを示すものであり、製品全体の安全性や品質を保証するものではないという理解が必要です。

主な事例

「無添加」という言葉は、多様な分野の製品に用いられています。

無添加食品

食品分野での「無添加」は、一般的に食品添加物が一切使用されていない、あるいは、天然に存在するものではない合成添加物が使われていないことを意味します。消費者庁は、無添加である旨の表示について、消費者に誤解を与えないよう適切な表示を求めており、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を示しています。このガイドラインでは、以下のような表示が消費者の誤認を招きやすく、景品表示法上の「優良誤認表示」にあたる恐れがあるとして注意を促しています。

何が無添加なのかを具体的に示さず、「無添加」とだけ表示する。
食品表示基準で認められていない「天然」「合成」といった添加物への修飾語を用いる。
その食品には法規制によって使用できない、または通常使用されない添加物について、あたかも不使用が特別であるかのように強調表示する。
ある添加物を使用していないと表示しながら、実際には同等の機能を持つ別の添加物や原材料を使用している。
無添加であることと、健康や品質の優位性などを、具体的な理由を示すことなく関連付けて表示する。

なお、これらのガイドラインを受けて、2024年4月以降、一部の商品では「無添加」の表示が見直されたり削除されたりする動きが見られました。

無添加化粧品

化粧品における「無添加」は、タール色素などの人工着色料、人工香料、界面活性剤、石油系界面活性剤といった特定の成分を使用していないことを示すために用いられます。例えば、「無香料・無着色」といった表示も、広義にはこの無添加に含まれます。

無添加石鹸

石鹸の分野では、石油製品から化学合成された合成洗剤成分を使用していないことを指す場合が多いです。国内の一般店頭では、伝統的な製法で作られた石鹸の一部がこれにあたり、ミヨシ石鹸、シャボン玉石けん、牛乳石鹸などが知られています。

無添加住宅

「無添加住宅」という名称は商標として登録されていますが、これは家を建てる材料が全て無添加でできているという意味ではありません。シックハウス症候群の原因となるような特定の化学物質が使用されていないかのように消費者に誤解を与える可能性のある表示です。商標登録がなされていても、それは特許庁の管轄によるものであり、消費者庁が管轄する景品表示法上の「優良誤認表示」に関する規制とは異なります。

類似表現との比較

オーガニック

「無添加」と混同されやすい言葉に「オーガニック」があります。特に食品においては、両者の指す対象に違いがあります。

無添加: 製品の「製造過程」において、特定の合成添加物を使用していないことを主に指します。
* オーガニック: 製品の「原材料」そのものが、化学肥料や農薬などの化学薬品を使わずに生産されたものであることを主に指します。

つまり、無添加は最終的な製品の成分に関する不使用を強調する一方、オーガニックは製品の原料の栽培・飼育段階にまでさかのぼって化学物質の使用を制限している点が異なります。

まとめ

「無添加」表示は、特定の物質に対する消費者の懸念に応える形で広まりましたが、その定義は曖昧であり、製品全体の安全性や品質を保証するものではありません。特に食品分野では、誤認を招かないための表示ルールが示されています。消費者は「無添加」という表示を見た際に、具体的に何が使われていないのかを確認し、それが製品の選択においてどのような意味を持つのかを理解するリテラシーを持つことが重要です。

無添加