燃料コック

燃料コック：燃料供給を制御するバルブ

燃料コックは、液体や気体の燃料の供給経路を調整するバルブです。日本語では「燃料コック」の他に「フューエルコック」という呼び名も用いられ、英語圏ではアメリカでpetcock、イギリスでpetrol tapと呼ばれることもあります。

オートバイにおける燃料コック

キャブレターを用いた自然流下式燃料供給システムを持つオートバイでは、燃料コックは燃料タンクからの燃料供給を制御するために不可欠な部品です。通常、一台のオートバイには一つの燃料コックが装備されますが、トライアンフ・ボンネビルなど、複数の燃料コックを持つ車種も存在します。

自然流下式では、燃料タンクをキャブレターよりも高い位置に設置し、重力によって燃料を供給します。しかし、この方式では駐車中も燃料が蒸発し続け、燃料の無駄や環境への影響、キャブレターの目詰まりといった問題を引き起こす可能性があります。燃料コックは、これらの問題を解決するために、燃料供給の停止を可能にする重要な役割を果たします。

一方、[燃料噴射装置]を採用する近代的なオートバイでは、電気式燃料ポンプが使用され、燃料コックは不要になっています。排出ガス規制の強化に伴い、燃料噴射式オートバイが増加したため、燃料コックを搭載した車種は減少傾向にあります。

燃料コックの種類

手動式燃料コック

手動式燃料コックは、「オン」、「オフ」、「リザーブ」の3つのポジションを持ちます。「リザーブ」ポジションは、燃料タンクの底部に残った燃料を使用するためのものです。多くの場合、燃料コックは燃料タンク底部から垂直に突き出したパイプと一体化しており、上部と下部に燃料を取り出す口が設けられています。通常は「オン」ポジションで使用し、燃料が少なくなると自動的に供給が停止します。リザーブを使用することで、燃料切れによる走行不能を回避し、燃料計の省略を可能にします。

自動式(負圧式)燃料コック

1980年代後半から登場した自動式燃料コックは、インテークマニホールドの負圧を利用してバルブを作動させます。「オン」、「リザーブ」、「プライマリー」の3つのポジションを持ちます。「オン」ポジションでは、エンジン始動時のみ燃料が供給されます。「プライマリー」ポジションは、キャブレターに燃料を直接供給し、始動性を向上させるためのものです。多くの場合、「プライマリー」は「リザーブ」と同様、タンク底部の燃料を使用します。負圧式燃料コックの中には、リザーブポジションの代わりに燃料計を備えたものもあります。

その他の用途

自動車

現代の自動車では、燃料ポンプによる強制供給が一般的であり、燃料コックはほとんど使用されません。しかし、古い車種、例えば1950年代のポルシェ356やスバル360、トラバントP601などには、燃料コックが装備されていました。

農業機械

1900年代前半から、ジョンディアのトラクターなど、多くの農業機械に燃料コックが採用されてきました。自然流下式燃料タンクとの組み合わせが多く、真空式など様々な形式が用いられています。

小型エンジン

発電機や草刈機、チェーンソーなどの小型エンジンにも、燃料コックが使用されます。小型ガソリン発電機では、「オン」と「オフ」の2ポジションが一般的です。一方、可搬式小型エンジンでは、キャブレターの構造上、燃料コックが不要な場合もあります。

燃料コックの重要性

燃料コックは、燃料の無駄を減らし、環境への影響を軽減し、エンジンの始動性や信頼性を向上させる上で重要な役割を果たします。古くから様々な機械で使用され、現代でもその重要性は変わりません。しかし、技術革新に伴い、燃料コックを使用しないシステムも増加しています。

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