猿田彦神社

猿田彦神社の概要

猿田彦神社（さるたひこじんじゃ）は、三重県伊勢市にあり、伊勢神宮の内宮の近くに位置しています。祭神には猿田彦大神とその子孫である大田命が祀られています。同神社は、旧社格として無格社に分類され、第二次世界大戦後には別表神社の扱いとなりました。

この神社の起源は、日本神話にちなんでいます。ニニギが晴天から地上へ降り立つ際の先導を猿田彦神が行ったとされています。『倭姫命世記』に記されているように、その子孫の大田命は、天照大神を祀るために五十鈴川の上流の地を倭姫命に提供しました。大田命の後、宇治土公（うじのつちぎみ）という名で神宮に仕える家系が続いていきました。

この宇治土公は、猿田彦神を自らの屋敷神として祀っていましたが、明治時代には神官の世襲制度が廃止され、猿田彦神社が新たに設立されました。猿田彦神は特に「道を切り開く神」とされ、交通安全や方位除けの信仰を受けてきました。

建築様式と祭り

神社の本殿は「さだひこ造り」という特徴的な形式で建てられており、欄干や鳥居には八角形の柱が使用されています。毎年5月5日に開催される御田祭は、三重県の無形民俗文化財に指定され、祭りの際には特定の神饌として飛魚が献上される伝統があります。

神社の境内には、天降りの際に猿田彦神と出会った天宇受売命を祀る佐瑠女神社（さるめじんじゃ）があり、こちらは芸能の神としても信仰されています。玉串大内人（たまぐしおおうちんど）という職に就いている者は、伊勢の式年遷宮の際に重要な役割を果たしてきました。このため猿田彦大神は建築の神ともされ、神棚においては、道を切り開く象徴として特別に御札が祀られています。

神社間の論争と歴史

猿田彦大神を祀る神社は全国に約2000社存在しますが、その中でも「地祗猿田彦大本宮」としての位置付けは鈴鹿市の椿大神社にあるとされています。この椿大神社の宮司は山本という姓で、猿田彦神社の宮司は宇治土公系の氏姓を持っています。これらの系譜の相違や歴史的な文献の記載から、猿田彦神の裔を巡って様々な見解が提出されています。

延暦期に成立した文献や他の歴史書には、大田命の子孫としての位置付けが記されていますが、鎌倉時代以降に猿田彦大神が宇治土公氏の祖として言及されるケースも増えていきました。この経緯から、猿田彦神社が総本社であるという考えも広がっていますが、裏付けとなる証拠は依然として議論の余地を残しています。

神社の重要性や独自の神話、そして関連する地域や神社との関係性を考慮すると、猿田彦神社は日本の信仰文化において非常に興味深い場所であり、多くの参拝者にとっても特別な意味合いを持っています。

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