田中町

田中町（たなかまち）

長野県小県郡に存在した自治体で、現在は東御市の中心部、特にしなの鉄道田中駅の周辺地域に該当します。この項目では、町制を施行する前の名称であった県村（あがたむら）の歴史についても詳しく説明します。

地理

町の北側には、長野県の象徴ともいえる大河、千曲川がゆったりと流れていました。千曲川は地域の自然景観を形成する上で重要な要素であり、また、その水資源は人々の生活や農業にとっても不可欠な存在でした。

歴史

田中町の歴史は、その前身である県村の複雑な変遷から始まります。明治時代初期の1876年（明治9年）、行政区画の再編が行われ、加沢村、常田村、長坂村、夏目田村、田中村、本海野村、海善寺村という七つの村が合併して、新たに県村が誕生しました。この時の県村は、現在の東御市の広範囲をカバーする大きな自治体でした。

しかし、その体制は長く続かず、数年後の1883年（明治16年）には二度の大きな変更がありました。まず1月26日には、一度県村に合併されていた地域の一部が再び分離し、加沢村と海善寺村がそれぞれ独立した村として再出発しました。（この時の海善寺村の領域は、後に別の合併で和村の一部となります）。続いて7月23日にも、県村の別の地域が分かれ出て、本海野村、田中村、常田村が新たな村として再編成されました。これにより、1876年に誕生した県村は、元の構成村の一部が分離独立するという状況になりました。

明治時代後期、全国的に町村制が施行された1889年（明治22年）4月1日、この地域は再び大きな再編を迎えます。この時の県村は、先ほど分立した田中村、常田村、加沢村、そして一部が残っていた元の県村、さらに本海野村の区域が合併して、改めて「県村」として発足しました。これは、一度分かれた地域が再び集結し、新たな自治体として歩み始めたことを意味します。

県村はその後も発展を続け、昭和時代に入った1953年（昭和28年）10月1日、町制が施行されるとともに名称が変更され、田中町となりました。これにより、地域の中心地としての性格を強め、近代的な「町」としての体制を整えました。

しかし、田中町としての存在は比較的短命でした。昭和の大合併が進む中で、1956年（昭和31年）9月30日、田中町は隣接していた祢津村、和村と合併し、より広域な自治体である東部町が誕生しました。この合併により、田中町は一つの行政単位としてはその歴史に幕を閉じました。

その後、東部町は平成の大合併を経て、2004年（平成16年）に北御牧村と合併し、現在の東御市の一部となりました。田中町の領域は、この東御市の中核地域として、現在もその歴史と文化を受け継いでいます。

交通

田中町は、交通の要衝としても重要な役割を果たしていました。鉄道においては、地域の主要な幹線であった日本国有鉄道（現在のしなの鉄道）信越本線が町内を通り、田中駅が設置されていました。田中駅は現在も地域の中心駅として機能しています。

道路については、主要幹線道路である国道18号が町内を縦断しており、近隣地域や広域への交通アクセスを支えていました。これらの交通網が、田中町及び県村時代の地域経済や人々の交流を活発にしていました。

参考文献・関連項目

角川日本地名大辞典 20 長野県
長野県の廃止市町村一覧

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