田代ダム

田代ダムについて

田代ダムは、日本の静岡県静岡市に所在し、重要な水力発電を担う一級水系・大井川本川の源流部に位置しています。このダムは、東京電力リニューアブルパワーによって管理されています。

歴史的背景

ダムの開発は1906年に日本とイギリス資本の合弁会社である日英水力電気によって始まりましたが、イギリス資本が撤退後、日本単独の資本に切り替わりました。1911年に発足した日英水力電気は、翌1921年に早川電力に吸収され、その後大井川水系と富士川水系を結ぶ水力発電計画を推進しました。その計画に基づいて、1924年に着工された田代ダムは、1928年に完成し、大井川水系で初めての本格的なダムとして利用されるようになりました。

田代ダムは、重力式コンクリートダムという構造を持ち、高さは17.3メートルです。特にその設計として、堤体にゲートを設けない非越流型が特徴です。ダム脇には洪水吐きが設けられ、余剰分の水が適切に放流されます。

発電と管理の変遷

田代ダムで取水された水は、南アルプスを貫く導水トンネルを経て、早川支流の保利沢川ダムに送られ、そこで発電が行われます。田代川第一発電所と第二発電所はそれぞれ17,400kWと22,700kWの出力を誇り、初期の大井川水系では最大級の発電能力を持っていました。

発電事業の主体は、当初早川電力でしたが、後に東京電燈の傘下に入り、1938年に国家である日本発送電に接収・合併されました。戦後、経済力集中排除法に基づき日本発送電は全国の電力会社に分割され、田代ダムの管理は東京電力リニューアブルパワーに引き継がれました。特に、田代ダムは「一河川一社主義」の原則に反し、東京電力のみが管理している特異点でもあります。

水利権問題と環境影響

田代ダムから取水される水量は1924年当初の毎秒2.92トンから1955年には毎秒4.99トンへと増加しましたが、この情報は下流の自治体には通知されていませんでした。その結果、下流の大井川が無水区間になり、「川枯れ」問題が発生しました。

この問題は、河川環境を守るために市民の意識が高まり、水利権の返還運動へとつながりました。住民たちは1987年に増水要求集会を行い、中部電力は一定程度の放流を実施しましたが、田代ダムからの放流量が改善されることはありませんでした。

河川法の改正により、2005年には水利権の更新が行われ、流域自治体や電力会社間での協議が開始されました。最終的に田代ダムからの河川維持放流が始まり、環境保全に向けて期待が寄せられるようになりました。

アクセス方法

田代ダムへは直接アクセスすることはできませんが、畑薙第一ダムまでの道は整備されています。車でのアクセスは国道362号または静岡県道を経由し、公共交通機関では静岡駅からバスを利用することが可能です。畑薙第一ダムからは徒歩でのアクセスが必要です。

田代ダムはその美しい環境と歴史的意義から、多くの登山者にとって魅力的な目的地であり続けています。

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