甲標的

甲標的（こうひょうてき）

概要

甲標的は、大日本帝国海軍のために開発された特殊潜航艇であり、主に潜水艦からの攻撃を行うために設計された。これは、洋上での奇襲を目指し、魚雷を搭載し、もともとは水面下からの攻撃を想定して作成された。この艇は、最初は鉛蓄電池で動く小型潜航艇として設計され、後にディーゼルエンジンを搭載して行動能力を向上させた。

歴史

構想段階

1931年に、日本の艦政本部では独自の兵器開発を進めるため様々なアイデアを考慮していた。当時の国際情勢の中、日本は、経済力や生産力に差があった米国海軍に対抗する必要があり、兵器の開発が急務であった。特に、横尾敬義大佐が提案した「魚雷肉攻案」に注目が集まったが、海軍の伝統に従い、人間が魚雷に乗る形式から小型潜航艇による魚雷発射へと考えが変更されていった。

この段階で志波国彬大佐の構想に基づき、「母艦から発射される超小型潜水艦」のアイデアが浮上し、結果として甲標的が開発されることとなる。1932年には、全長25メートル、排水量42トン、最高速力30ノットを目指す設計が決定され、試作開発が進められた。

開発の進行

1933年には第一次試作艇が完成し、耐圧試験が行われたが、いくつかの問題点が発覚した。その後も実験を繰り返し行い、1937年には実戦投入のための準備が整った。これにより、甲標的は改良版が続々と生産されることになる。

実戦投入と使用

1939年に甲標的は正式に制式採用されたが、実際の初陣は1941年の真珠湾攻撃であった。甲標的部隊は、敵軍港へ潜入し、奇襲攻撃を行う想定で運用された。クルーは艦から発進し、真珠湾に向かうも、戦果は限定的であったとされる。

その後もシドニー湾やディエゴ・スアレス港など、中国太平洋戦争の最前線で活躍し、敵艦を攻撃したが、これもまた思うような成果は得られなかった。

特徴と性能

構造

甲標的はすっきりとした流線形を持つ船体を持ち、魚雷を2本搭載する設計がなされていた。潜水性能は一定の深度まで達するものの、波浪の影響で浮上時の安定性に欠け、司令塔が露出することが多かった。

攻撃力

攻撃には、直径45センチの九七式魚雷を用いることが多く、発射管から射出される。攻撃時の命中精度は非常に低く、索敵も不十分であったため、成功率は限られていた。

防御力と機動性

甲標的は小型であったため、探知されにくい反面、操作が難しく、実戦では多くの艇が発見・撃沈される結果となった。また、操縦者の疲労や艇内環境の劣悪さから、持続的な運用が難しかった。

結論

甲標的は多くの実戦を経験した特殊潜航艇であり、その開発は当時の技術の限界を示すものであったが、同時に多くの課題と教訓を残した。戦後、この経験はより大型で高性能な潜水艇の開発へと繋がっていくことになる。

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