砂鉄

砂鉄（さてつ）とは、岩石に含まれる磁鉄鉱などが風化により母岩から分離し、運搬される過程で集積したものです。訓読みでは「かなすな（金砂）」とも呼ばれ、金属の砂という意味を持ちます。

主に磁鉄鉱やチタン鉄鉱から成り、黒色（四酸化三鉄）を呈しますが、酸化第二鉄の影響で褐色を帯びることもあります。磁鉄鉱を含むため、磁石によく吸い付く性質があります。

砂鉄は、風化や堆積の過程の違いから、残留鉱床または漂砂鉱床を形成します。漂砂鉱床は海岸や川岸など、平坦な場所に堆積したものです。中国地方で産出される砂鉄は、主に山砂鉄であり、これは残留鉱床に分類されます。

かつては、製鉄の主要な原料でしたが、現在は鉄[[鉱石]]にその役割を譲っています。しかし、日本刀に使われる玉鋼（たまはがね）の製造には、たたら吹き製鉄において、現在でも不可欠な材料です。ただし、砂鉄に含まれるチタンが不純物となるため、高炉での製鉄には適していません。過去には、製鉄所での国産原料化を目指して高炉での製鉄実験が行われましたが、出銑口の詰まりが頻発し、近代製鉄の原料としては不向きであることが判明しました。

日本では、西日本、特に中国地方で古くから山砂鉄が採掘されてきました。一方、太平洋戦争前後には、東日本の漂砂鉱床で砂鉄鉱山の開発が見られました。北海道、青森県（淋代海岸）、千葉県などで漂砂鉱床が採掘され、磁力選鉱によって純度を高めた上で、近隣の製鉄所に運ばれていました。東日本の砂鉄は、チタンを含むことが多く、地下資源が逼迫していた時代には、チタンの原料鉱石としても活用されていました。しかし、時代の流れとともに、すべての砂鉄鉱山は閉山しました。現在では、鳥取県において玉鋼および日本刀製造技術の保存・伝承のため、限定的に山砂鉄が採掘されています。

小学校の理科の授業では、砂鉄の収集が教材として用いられることがあります。また、磁力線を可視化したり、スライムに混ぜて磁性流体のようなものを作ったりするなど、磁力について学ぶための教材としても利用されています。

日本では、太平洋岸よりも日本海岸の方が良質な砂鉄が採れるとされています。

中国地方の砂鉄

出雲地方は「たたら製鉄」ゆかりの地であり、地域で産出される砂鉄は、その性質に応じて使い分けられてきました。

山陰側（山陰帯）の磁鉄鉱系列花崗岩に由来する砂鉄は純度が高く、「真砂（まさ）砂鉄」と呼ばれています。一方、山陽側（領家帯）では、花崗岩はチタン鉄鉱系列であり、砂鉄はほとんど含まれていませんが、安山岩や玄武岩などの火山岩に由来する「赤目（あこめ）砂鉄」が産出します。赤目砂鉄は、純度は低いものの、加工しやすいという特徴があります。

道後山山頂付近の大池は、かつて砂鉄を採掘した跡であると推測されています。



関連事項:
鉱石 - 鉄[[鉱石]]、磁鉄鉱、チタン鉄鉱
浅砂鉱床
鉄山
金持神社、金鑚神社、金山神社

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