神峯山寺

神峯山寺（かぶさんじ）

神峯山寺は、大阪府高槻市にひっそりと佇む天台宗の寺院です。根本山と号し、毘沙門天を本尊としています。中でも兜跋毘沙門天は、秋の大祭でのみ開帳される秘仏です。この寺は、日本で最初に毘沙門天が安置された霊場と伝えられ、その歴史は古く、深い精神性を感じさせます。境内は大阪府立北摂自然公園に位置し、豊かな自然に囲まれています。

歴史

開山

寺伝によれば、文武天皇元年（697年）に役小角が葛城山での修行中、北方の山から放たれる黄金の光に導かれ、この地に至りました。そこで出会った天童の霊木から毘沙門天を刻み、祀ったのが始まりとされています。この時刻まれた毘沙門天は四体あり、一体は神峯山寺に、残りは鞍馬寺や朝護孫子寺に飛散し安置されたという伝説があります。

中興

宝亀5年（774年）には、光仁天皇の皇子である開成皇子が勝尾寺から入山し、光仁天皇の命により本堂を建立、住職となりました。これにより、神峯山寺は天台宗寺院となり、皇室との関係を深めていきます。境内には開成皇子の埋髪塔や光仁天皇の御分骨塔が現存し、皇室との繋がりを今に伝えています。

平安時代から江戸時代

平安時代後期には、融通念仏宗の源流が伝えられ、橘輔元という人物が毘沙門天に救いを求めたという逸話が残っています。鎌倉時代以降は、楠木正成や足利義満など、武将からの信仰を集めました。江戸時代には、大阪の商人たちが商売繁盛を祈願し、巡礼地として賑わいました。鴻池善右衛門による道標がその名残を今に伝えます。

幕末から明治

幕末には伏見宮邦家親王が「日本最初毘沙門天」の扁額を寄進し、有栖川宮熾仁親王も寺にゆかりの品を奉納するなど、皇室との関係は明治時代まで続きました。

本尊

神峯山寺の本尊は、毘沙門天、兜跋毘沙門天、双身毘沙門天の三体からなる珍しい形態をとっています。

毘沙門天: 吉祥天と善膩師童子を脇侍とする三尊形式で、国家安泰、子授け、家庭円満にご利益があるとされます。
兜跋毘沙門天: 福徳先勝の神として武将や商人からの信仰を集め、秋の大祭でのみ開帳されます。
双身毘沙門天: 天台密教の秘法によって祈願される、歴代住職の持仏です。

境内

本堂: 安永6年（1777年）に再建された建物で、三体の毘沙門天が安置されています。
光仁天皇墓碑: 光仁天皇の分骨塔です。
開山堂: 役小角が伽藍を建立したとされる場所にあり、役小角とその使いの鬼が祀られています。
九頭龍滝: 修験者の滝行に使用されていた滝で、神峯山寺開山の縁起にも登場します。

その他、境内には数多くの堂宇や史跡が点在し、見どころ満載です。

文化財

木造阿弥陀如来坐像
木造聖観音菩薩立像 2躯
モリアオガエル（天然記念物）

信仰

神峯山寺は、毘沙門信仰、山岳信仰、阿弥陀信仰が融合した寺院です。時代によって信奉者や祈願の内容が変化してきた毘沙門信仰は、この寺の大きな特徴と言えるでしょう。近年では、合格祈願に訪れる人も増えています。

自然

境内は豊かな自然に恵まれ、四季折々の風景を楽しむことができます。特に紅葉の時期は美しく、多くの観光客で賑わいます。

周辺寺院との関係

神峯山寺の周辺には、かつて奥之院であった北山本山寺や、南山安岡寺など、神峯山寺と関連のある寺院が点在しています。

御詠歌

神峯山寺には、数多くの御詠歌や短歌が残されています。これらの歌は、神峯山寺の歴史や信仰、自然を表現しており、訪れる人々の心を癒します。

交通アクセス

* JR高槻駅より高槻市営バス「神峯山口」下車、徒歩約1.3km

神峯山寺は、歴史と自然が織りなす、都会の喧騒を忘れさせてくれる癒やしの空間です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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