紅幇

紅幇（ほんぱん）について

紅幇は、中国の歴史において重要な役割を果たした秘密結社の一つです。青幇と対になる存在として知られ、同時期に成立し、発展を遂げました。一般的に紅幇は、広い意味で哥老会と天地会の2つの幇会の総称として使われますが、特に長江中下流域の哥老会に焦点を当てた狭義の定義でも頻繁に語られます。

背景と発展

紅幇の起源は、清朝の乾隆帝の時代に遡ります。天地会は主に華南地域、特に東南アジアにかけて客家の人々の社会で盛んに活動していました。1786年、台湾の羅漢党の林爽文の乱によって天地会の存在は広く知られるようになりました。

一方、哥老会は清朝前半期に生まれ、多くは四川省の沿海部から内陸へ流入した移民と土着の住民が融合したことに起因しています。また、一説には内陸の水運業者から派生したとも言われています。白蓮教徒の乱後、哥老会としての組織が確立されました。

これらの幇は太平天国の乱の際、反革命軍である湘軍や淮軍の中に多くの紅幇のメンバーが含まれました。乱が終息を迎えると、解散した兵士たちの支援を受けながら長江中下流域に勢力を広げていきました。それに伴い、他の水運関連の幇会と抗争を繰り広げるようになります。市場における影響力を保つため、一般社会では青幇とは区別して哥老会を紅幇と呼んでいました。

経済の変遷と連携

19世紀中葉に入ると、内陸水運の衰退が見え始めました。この影響で、紅幇の経済基盤はアヘンの流通へと舵を切ることとなります。このような情勢の変化は、青幇との親密な関係をもたらし、1899年には両者の頭領が兄弟の契りを結び、相互に入会することに至りました。

その後の歴史の中で、辛亥革命を経て四川の哥老会系の紅幇は軍閥化していきます。日中戦争の際には、蔣介石が重慶に政府を移した際、多くの哥老会系紅幇が政府に協力しましたが、同時に上海の天地会系紅幇は小刀会起義を経てその勢力を失い、青幇にいっそう吸収される形となりました。

フィクションへの影響

紅幇はその独特の歴史的背景から、さまざまなフィクションに影響を与えています。たとえば、漫画『蒼天の拳』の中の「紅華会」は紅幇をモデルにしたキャラクターです。また、『満州アヘンスクワッド』や『拳児』にも天地会の要素が登場します。これらの作品は、紅幇の神秘性と歴史を背景にしたストーリーを描いています。

参考文献

日本の研究者、渡辺惇と野口鐵郎の編集による『相互扶助で自衛を：青幇／紅幇』では、紅幇の社会的役割が詳細に解説されています。これは、中国の近現代史における結社の重要性を理解する上でも貴重な一冊です。

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