美濃囲い

美濃囲い：振り飛車戦法の要塞

美濃囲いは、将棋の振り飛車戦法において主要な囲いのひとつです。玉将を2八、右銀を3八、左金を5八に配置する（右金は初期位置のまま）のが基本形であり、堅牢な防御を誇ります。居飛車戦法における矢倉囲いと並ぶ代表的な囲いとされています。本記事では、美濃囲いの特徴、歴史、派生形などを詳しく解説します。

美濃囲いの長所と短所

長所

横からの攻めに強い： 低い構えのため、居飛車からの横からの攻めに対して非常に強い防御力を発揮します。飛車の成りや打ち込みにも対応しやすく、反撃の機会を伺うことができます。
激しい攻めが可能： 敵陣への積極的な攻めにも対応でき、飛車を切るような激しい戦いを展開することも可能です。

短所

上部や端からの攻めに弱い： 玉の周囲に守備駒が少なく、上部や端から攻められると脆い点が弱点です。特に、3六桂馬を捨てられると、相手の角筋を許し、簡単に崩される危険性があります。これを防ぐために、端歩を突かない「棺桶美濃」という形がありますが、これは相手の攻めに対してより脆弱になります。
玉に紐がない： 玉に紐がないため、一度王手されると、即詰み、もしくは厳しい寄せを受ける可能性が高くなります。
穴熊囲いとの比較： 居飛車穴熊と比較すると、堅牢性に劣ります。ただし、舟囲いに対しては堅さで優位に立てる場合があります。

美濃囲いの名称の由来

美濃囲いの名称の由来には諸説あります。

美濃国の城： 美しい美濃国の城に由来する、という説。織田信長が岐阜城にちなんで命名したという説もあります。
美濃出身の棋士： 江戸時代には、美濃国出身の棋士が創始したという説が一般的でした。具体的には、美濃の音通和尚や松本紹尊七段の名前があがっています。
三枚の金銀： 三枚の金銀を「三布」に見立てたという説もあります。

これらの説の信憑性については、明確な結論が出ていません。音通和尚の棋譜には平手で美濃囲いを指した最古の例があり、松本紹尊も美濃囲いの開発者として挙げられていますが、明確な証拠はありません。

美濃囲いの歴史

振り飛車戦法は江戸時代から人気がありましたが、美濃囲いは、1765年（明和2年）に香落ちの棋譜で初めて登場しました。平手での美濃囲いは、それから約50年後の1821年（文政4年）の棋譜に登場します。

昭和初期までは囲いとしての評価は高くありませんでしたが、1950年頃以降、大野源一らの活躍により再評価され、普及していきました。大野源一は、美濃囲いの堅牢性と自身の棋風との適合性を理由に、この囲いを用いていました。

美濃囲いの派生形・変形

美濃囲いには、様々な派生形・変形があります。代表的なものを挙げると、以下の通りです。

銀美濃： 左金のかわりに左銀を使う。金銀の連携は向上するが、左銀の横腹が弱点となる。
片美濃： 金銀が1枚少ない形。堅さは劣るが、攻めに転じやすい。中飛車では、この形になることが多い。
ダイヤモンド美濃： 4七の位に左銀を配置する。金銀4枚で囲うため非常に堅い。
高美濃： 左金を4七に進めた形。横の堅さを維持しつつ、上部からの攻めにも対応しやすい。
銀冠： 高美濃からさらに手を進めた形。上部からの攻めに強いが、玉頭が弱い。
銀冠穴熊： 銀冠から穴熊に潜った形。玉が戦場から遠くなる。
ちょんまげ美濃： 2筋の歩を突いた状態の美濃囲い。
坊主美濃： 玉頭に歩がない美濃囲い。
木村美濃： 木村義雄が多用した囲い。矢倉囲いに近いと考える者もいる。
連盟美濃： 日本将棋連盟のウェブサイトで誤って掲載された形。意外にも実戦で用いられることもある。

結論

美濃囲いは、その歴史と多様なバリエーションを持つ、振り飛車戦法における重要な囲いです。その長所と短所を理解し、状況に応じて適切な派生形を選択することで、より効果的な戦いを展開できるでしょう。

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