肥薩おれんじ鉄道線

肥薩おれんじ鉄道線：九州の美しい風景を巡るローカル線

肥薩おれんじ鉄道線は、熊本県八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ、全長約117kmの鉄道路線です。2004年、九州新幹線開業に伴い、JR九州から肥薩おれんじ鉄道へ経営移管されました。新幹線開業による並行在来線の第三セクター鉄道への移管は、本州以外では初めての事例でした。

線路の概要と運行形態

全線が交流電化されていますが、旅客列車はコスト削減のため、交流対応電車ではなく、軽快な気動車を使用しています。これは、電化されているにもかかわらず気動車を使用する珍しい例であり、沿線の景観との調和を図りながら効率的な運行を目指していると言えるでしょう。一方、貨物列車はJR貨物によって運行されており、九州の物流を支える重要な役割を担っています。

運行形態は、普通列車のみで、ほとんどの列車がワンマン運転です。基本は1両編成ですが、混雑時には2両編成に増結されます。車庫のある出水駅を中心に、車両の増結・分割が行われています。かつては車掌乗務列車も運行されていましたが、2013年には全てワンマン運転となりました。

特急列車と普通列車

九州新幹線開業までは、特急列車も運行されていましたが、新幹線開業後は、肥薩おれんじ鉄道線内のみで利用できる列車は消滅しました。現在、毎週木曜日にはJR九州の特急「36ぷらす3」が片道のみ乗り入れていますが、肥薩おれんじ鉄道線内のみの利用はできません。

普通列車は、八代駅と川内駅でJR線と接続しており、運行間隔は均一ではありません。全線直通の列車に加え、出水駅発着の区間列車も多く設定されています。また、沿線地域の学校に通う生徒の利便性向上のため、いくつかの区間列車が設定されており、柔軟な運行ダイヤが組まれています。

特に、八代駅と新八代駅（九州新幹線）、隈之城駅（地元高校）間ではJR線との直通運転があり、利用者の利便性を高めています。2021年のダイヤ改正では、新八代駅発着の列車が増便され、利便性が向上しました。

観光列車「おれんじ食堂」

2013年から運行されている観光列車「おれんじ食堂」は、肥薩おれんじ鉄道の顔ともいえる存在です。ダイニングカーとリビングカーの2両編成で、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏によるデザインが施されています。沿線の特産品を使った料理やデザートが提供され、美しい車窓風景を楽しみながら食事ができます。

様々なサービスも用意されており、ウェルカムドリンク、コーヒーとお菓子の無料配布、主要駅でのマルシェ、乗務員による観光案内、生演奏など、五感を刺激する旅を演出しています。メニューはグルメ雑誌「食楽」を発行する徳間書店と提携しており、クオリティの高さがうかがえます。

停車駅は新八代、八代、日奈久温泉、佐敷、津奈木、新水俣、水俣、出水、阿久根、薩摩高城、川内です。金土日祝日に運行されていますが、貸切も可能です。

運行開始以来、ダイヤ改正を重ね、運行本数や時刻、メニューなどが変更されてきました。近年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、運行日数を調整しています。

その他の列車

「おれんじ食堂」以外にも、団体貸切列車「おれんじカフェ」、列車を丸ごとレンタルできる「ドリームトレイン」、ダイヤ作成体験ができる「マイトレイン・鉄道教室」、夏の期間限定で運行される「納涼ビール列車」など、個性豊かな列車が運行されています。

また、JR九州の観光特急「36ぷらす3」や、クルーズトレイン「ななつ星in九州」も乗り入れており、多様なニーズに対応しています。

かつては、「海風」「潮彩」などの観光快速列車や、「スーパーおれんじ」「オーシャンライナーさつま」などの直通快速列車も運行されていましたが、現在は廃止されています。

歴史

肥薩おれんじ鉄道線は、肥薩線と川内線の一部として開業しました。その後、鹿児島本線の経路変更を経て、現在の姿となりました。国鉄時代、JR時代を経て、2004年に第三セクター鉄道として生まれ変わりました。開業以来、地域住民のニーズに応えるべく、ダイヤ改正や新列車の導入などを積極的に行ってきました。

利用状況と沿線

沿線には、豊かな自然や歴史的建造物、温泉など、魅力的な観光資源が数多く存在します。観光客だけでなく、地元住民の生活の足としても重要な役割を担っています。

まとめ

肥薩おれんじ鉄道線は、単なる交通手段にとどまらず、地域の活性化に貢献する重要なインフラです。美しい自然、多様な列車、そして地域住民の温かさを感じられる、魅力あふれる路線と言えるでしょう。

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