英二

『英二』は、1999年に公開された黒土三男監督による日本のクライムサスペンス映画です。長渕剛主演の映画シリーズ第3作目であり、同監督の3作目にもあたります。フジテレビが制作し、東映が配給を担当しました。本作は、1988年にTBS系列で放送されたテレビドラマ『とんぼ』とその続編である1997年放送の『英二ふたたび』の物語をさらに発展させた作品となっています。

8年の刑期を終え出所した主人公、小川英二は、まず自身の過去と因縁を清算すべく八田興業を壊滅させます。しかし、かつての舎弟である常吉は、組長である湯沢を射殺した罪で服役中でした。身寄りも頼れる仲間もいない英二は、10年前に姿を消した妹・あずさを探すため、唯一の手がかりである「西にいる」という情報をもとに、単身九州へ向かいます。そして、熊本にたどり着きます。

かつて世話になった人物、松の家に身を寄せ、熊本の暴力組織・村川組の庇護を受けることになりますが、松はこれを快く思いません。そこで英二は、日本語を話せない若い中国人女性・梅花（メイホウ）と出会います。最初は反発し、追い払おうとする英二でしたが、やがて二人は惹かれ合うようになります。しかし、梅花が密入国者であり、村川組に騙されて売春を強いられていることを知った英二は、彼女を村川組から救い出し、故郷である中国へ帰国させることを決意します。

その後、英二は妹のあずさが鹿児島にいることを突き止めます。再会を果たした英二は、あずさが過去に村川組から酷い仕打ちを受けていたことを知ります。一方、梅花には村川組の魔の手が迫っていました。英二は、妹と梅花への復讐を決意し、村川組へ単身乗り込みます。アサルトライフルで武装した英二による、壮絶な抗争が幕を開けます。

本作には、長渕剛演じる小川英二をはじめ、イ・ナヨン演じる梅花、哀川翔演じる水戸常吉、若林しほ演じる森島あずさなど、多くの実力派俳優が出演しています。村川組の組長役には高橋長英、その他、小坂徳利、上田耕一、渡辺哲、三遊亭遊三、十貫寺梅軒、モロ師岡、新保智、橋本亘平、石倉三郎、松村達雄といった豪華な顔ぶれが脇を固めます。

監督・脚本は黒土三男、音楽は長渕剛、笛吹利明、瀬尾一三が担当。撮影、照明、美術、編集、録音など、スタッフも充実しており、高いクオリティの作品に仕上がっています。主題歌には長渕剛の「とんぼ」が使用されています。

映画『英二』は、テレビドラマ版とは異なる展開や、新たな登場人物、そしてよりスケールの大きな抗争劇が展開されることで、オリジナル作品を凌駕する迫力と深みのある作品となっています。しかし、この映画の製作過程においては、監督の黒土三男と主演の長渕剛との間に軋轢が生じ、現在では両者の間に交友関係はないとされています。この映画は、長渕剛の代表作の一つとして、多くのファンに支持されていますが、その制作過程の複雑さも含めて、現在でも語り継がれる作品となっています。

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