荷田在満

荷田在満（かだ の ありまろ）

荷田在満は、宝永3年（1706年）に生まれ、寛延4年（1751年）に没した江戸時代中期の国学者です。父は荷田春満の実弟である多賀道員で、後に春満の養子となりました。通称を東之進、大学といい、字は持之、号は仁良斎と称しました。山城国紀伊郡の出身です。

生涯

1728年（享保13年）に江戸へ出て、有職故実について幕府の諮問に応じました。その後、御三卿の一人である田安宗武に仕えました。1739年（元文4年）には『大嘗会便蒙』を出版しましたが、朝廷の秘儀を公開したとして罪に問われ、100日間の閉門処分を受けました。

『万葉集』に傾倒する田安宗武や賀茂真淵と対立し、国歌八論論争を引き起こしました。延享3年（1746年）には、宗武が真淵を推挙したことを機に田安家を辞しました。

学問と著作

荷田在満は、国学、有職故実、法制史、歌論など幅広い分野で活躍しました。主な著書としては、以下のものがあります。

『令三弁』: 法制史に関する著書で、律令に関する研究において重要な文献とされています。
『装束色彙』: 有職故実に関する著書で、装束の色に関する詳細な記述が見られます。
『国歌八論』: 歌論に関する著書で、国歌に関する独自の理論を展開しています。
『白猿物語』: 物語作品です。

『令三弁』の近代国史学・法制史学への影響

『令三弁』は、近代の国史学や法制史学に大きな影響を与えました。特に、瀧川政次郎の研究によれば、佐藤誠実の『律令考』によって、法制史学者の間で現存の令を養老令とする説が有力になる中、東京文科大学の小中村清矩教授は『令三弁』の説を墨守し、現存の令を大宝令として講義していました。

このため、小中村教授の講義を受けた人々や、当時の中等学校の教科書では、現存の令を大宝令と認識するようになり、その誤った認識が広く浸透しました。現在でも現存の令を大宝令と呼ぶ人が少なくないのは、この影響によるものとされています。

死後

大正4年（1915年）には、その功績が認められ、従四位が追贈されました。

参考文献

荷田春満、荷田在満 著、官幣大社稲荷神社 編『荷田全集 第7巻』吉川弘文館。https://dl.ndl.go.jp/pid/1223628。
佐藤誠実 (1899). “律令考（承前）”. 國學院雜誌 5 (14): 14 - 24. https://dl.ndl.go.jp/pid/3364703/1/9。
瀧川政次郎 編『佐藤誠実博士律令格式論集』汲古書院、1991年。doi:10.11501/13097740。ISBN 9784762924323。https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/13097740。
瀧川政次郎『佐藤誠実博士「律令考」解題』國學院大學〈國學院雑誌〉、1967年、1 - 7頁。doi:10.11501/3365370。https://dl.ndl.go.jp/pid/3365370/1/2。
瀧川政次郎『佐藤誠實の律令学』国学院大学法学会〈国学院大学法学 第5巻 第3号〉、1968年。https://dl.ndl.go.jp/pid/2689482/1/4。
瀧川政次郎 (1967). “「律令考」解題”. 國學院雜誌 68 (8): 4-5. https://dl.ndl.go.jp/pid/3365370/1/3。
* 田尻佐 編『贈位諸賢伝 上 増補版』近藤出版社、1975年。https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/12253111/1/3。

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