葵小僧

葵小僧（あおいこぞう）

葵小僧は、日本の江戸時代に名を馳せた盗賊であり、別名「大松五郎」としても知られています。生年は不詳ながら、寛政3年5月3日（1791年6月4日）の日付でその最期を迎えました。彼の活動は江戸の町を震撼させた凶悪なもので、多くの人々に恐れられました。

1. 史実における葵小僧の活動

寛政3年、彼は徳川家の家紋である葵の御紋を掲げた提灯を持つことで、商家に押し込む手法を用いました。その際には、押し込んだ先の婦女に対して必ず強姦を行うという残忍な手段で、江戸の町を荒らしました。この犯行は火付盗賊改方の長谷川宣以（通称：長谷川平蔵）によって止められることとなります。

葵小僧は板橋宿で捕まりますが、捕縛から約10日後に獄門にかけられました。通常、被害者の供述を基に刑罰が決定されるものですが、平蔵と幕閣の独断によりこの迅速な処刑が行われました。これは、強姦の被害者を思いやる判断だったとされています。

2. 鬼平犯科帳における葵小僧

葵小僧は池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』においても描かれており、特に『妖盗葵小僧』というエピソードで重要な役割を果たします。この物語では、葵小僧の本名「桐野谷芳之助」が明らかにされ、彼の生い立ちや盗賊としての成り立ち、そして江戸での暗躍が描かれます。

2.1 生い立ちと盗賊への道

桐野谷芳之助は尾張で生まれ、役者の息子として育ちました。役者としての道を歩み始めるものの、成長するにつれ、彼の容姿は評価を受けなくなり、様々なトラブルを抱えることになります。両親を亡くした後、女遊びに苦しみ、最終的に気に入った茶汲女に裏切られ、その復讐として彼女を殺害することに。

その後、盗賊の天野大蔵に出会い、盗賊稼業に足を踏み入れることになります。天野から剣術を学び、役者としての経験を活かして、当初は武士や商人、乞食にも変装しつつ、盗賊としての生活を始めました。次第に、被害者を強姦するようになり、凶悪な存在に成長していきました。

2.2 江戸における暗躍

寛政2年からは江戸の池之端仲町の骨董屋に本拠を構え、「鶴屋佐兵衛」と名乗って活動を始めます。長谷川平蔵は彼の存在を把握し、警戒を強めることになるが、芳之助はその後も数々の犯罪行為を重ね、最終的には数人を殺害するに至ります。

彼は「葵紋」付の袴を身につけるようになり、都市伝説のような存在として恐れられました。続く犯行では、さらなる残忍さが増し、ついには1件の押し込みでは抵抗した3名を殺害するまでに至るのです。

3. 捕縛と処刑

芳之助は日野屋からの通報や、配下の小四郎の行動が明らかになった結果、平蔵とその部下の急襲を受けて捕らえられます。捕まった後は、平蔵が直接取り調べを行いましたが、彼は自分の配下や盗人宿の詳細を明かすことなく、逆に被害者の名を暴露しました。

これは平蔵を驚かせると同時に、被害者にさらなる屈辱を与える意図があったと考えられています。結果的に、彼はその行いに対して斬首されました。平蔵の判断でこのような迅速な裁定が行われた背景には、多くの被害者の思いがあったとされています。以降、葵小僧の存在は江戸の伝説として語り継がれることとなります。

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