蘇民祭

蘇民祭とは

蘇民祭は、岩手県を中心に日本各地に伝わる裸祭りで、1000年以上の歴史を有します。岩手県内では毎年1月から3月にかけて複数の蘇民祭が開催され、「岩手の蘇民祭」として国の選択無形民俗文化財に選択されています。中でも、奥州市の黒石寺蘇民祭は、日本三大奇祭または日本三大裸祭りの一つとして広く知られています。

蘇民祭の由来

『備後国風土記』の逸文に、蘇民祭の由来が記されています。北海から南へ旅をしていた武塔神が、人間の姿となって蘇民将来と巨丹という兄弟に宿を求めました。巨丹はこれを拒みましたが、貧しい蘇民将来は快く迎え入れ、粟飯で精一杯もてなしました。数年後、再び武塔神が現れ、自らが建速須佐之男命であることを明かし、茅の輪を身につけ「我は蘇民将来の子孫である」と唱えれば無病息災が約束されると告げました。この逸話が基となり、平安時代中期には蘇民祭の原型ができたと考えられています。武塔神の正体は地域によって異なり、黒石寺では薬師如来とされています。

岩手県内各地の蘇民祭

岩手県内では各地で蘇民祭が行われていますが、関係者の高齢化や担い手不足により、裸の男性が蘇民袋を奪い合う祭りの部分は終了する傾向にあります。しかし、一関市の長徳寺蘇民祭のように、過去に一時中断されていた蘇民袋争奪戦が2014年に復活し、継続されている例もあります。

岩手県内の主な蘇民祭

1月2日：胡四王神社蘇民祭（花巻市・胡四王神社）
1月第2日曜日：興田神社蘇民祭（一関市・興田神社）
1月14・15日：伊手熊野神社蘇民祭（奥州市・伊手熊野神社）
1月下旬：永岡蘇民祭（金ケ崎町・町内永沢・永栄地区一帯）
2月下旬：光勝寺五大尊蘇民祭（花巻市石鳥谷町五大堂・豊山派 貴峯山光勝寺）
3月第１日曜日：長徳寺蘇民祭（一関市・長徳寺）
3月17日：早池峰神社蘇民祭（花巻市・早池峰神社）

黒石寺蘇民祭

概要

黒石寺蘇民祭は旧暦正月7日夜から8日暁にかけて行われます。参加者は祭りの1週間前から精進潔斎を行い、肉・魚やニラ、ニンニクなど臭いの強い食物、または火を通した食物を口にすることを禁じられます。

22時に鳴らされる梵鐘を合図に祭が始まり、浄飯米を持った祈願者の男女が水垢離をした後、「ジャッソー、ジョヤサ」と掛け声を上げながら本堂を三巡し、五穀豊穣などの幸福を祈願します。

23時30分からは、全裸に下帯のみを身につけた男たちが松明を掲げながら行進します。2時に7歳の男児2人が鬼子に扮して本堂に入り、福物の餅を境内にまいた後、再び境内へ戻ります。

5時には、鬼子が再び本堂に入り、「袋出し」の男たちが「蘇民袋」と呼ばれる麻袋を抱えて現れます。全裸の親方が小刀で蘇民袋を切り裂き、福物の小間木を男女が拾い、柴燈木登りに参加した男たちは蘇民袋を激しく奪い合います。最終的に、蘇民袋の首に最も近い部分を持っていた者がその年の取主となり、東西どちらの土地が豊作になるかが決まります。

地元住民以外でも、当日境内で届け出れば参加可能ですが、精進潔斎を厳守し、宗教行事であることを理解する必要があります。

近年の状況

近年、観光客増加に伴い、ストリーキング目的の参加者が増えたため、黒石寺では2007年以降下帯の着用が義務付けられました。2024年の開催を最後に終了する予定で、2025年からは護摩祈祷で伝統を継承する方針です。

ポスター掲示問題

2008年の蘇民祭に先駆けて奥州市が作成したポスターについて、JR東日本が「不快感を持つ人もいる」として駅構内への掲示を拒否しました。

外部リンク

黒石寺蘇民祭（岩手県）
黒石寺蘇民祭（奥州市）
妙見山黒石寺

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