西成線列車脱線火災事故

西成線列車脱線火災事故：戦時下の悲劇

1940年1月29日、大阪府大阪市此花区の西成線（現在の桜島線）安治川口駅構内で、列車脱線転覆火災事故が発生しました。この事故は、駅員の誤った分岐器操作が原因で、ガソリン動車が脱線・転覆し、火災が発生したものです。

事故の概要

事故が発生した西成線は、大阪駅と臨海部を結ぶ路線で、当時は軍需産業の発展に伴い、通勤客が急増していました。しかし、輸送能力は限界に達しており、単線区間も存在したため、朝夕のラッシュ時には乗車率が300%を超える状況でした。

当時、ガソリンは戦略物資として統制され、石炭も節約が求められていました。事故当日、大阪駅を出発した下り1611列車は、西九条駅から安治川口駅まで惰性で走行するよう規定されていました。しかし、列車が遅延したため、信号係が焦って分岐器を切り替えた結果、最後尾車両が脱線、転覆しました。

転覆した車両からはガソリンが漏れ出し、火花が引火して炎上。車両は満員で、脱出が困難な状況でした。その結果、死者189名、重軽傷者69名という甚大な被害が発生しました。

事故原因

直接の原因は、信号係が列車の通過中に分岐器を転換したことです。その背景には、戦時下の燃料節約という社会情勢がありました。しかし、列車通過中に分岐器を操作できる構造自体が大きな問題でした。

本来、分岐器には安全装置が備わっているはずでしたが、事故現場では撤去されていました。過去にも同様の事故が発生していたにもかかわらず、教訓が生かされていませんでした。

事故後の経過

事故後、信号係の駅員2名が起訴され、業務上過失汽車転覆致死罪で有罪判決を受けました。また、この事故をきっかけに、ガソリンを燃料とする鉄道車両の危険性が指摘され、より安全な軽油を燃料とするディーゼル動車の開発が進められました。

西成線では、事故後にガソリン動車の使用が中止され、電化工事が前倒しで行われました。この工事は「慰霊工事」と呼ばれ、同時に分岐器には安全装置が取り付けられました。

事故の教訓

西成線列車脱線火災事故は、多くの教訓を残しました。戦時下における安全意識の欠如、人為的ミスに対する対策の重要性、そして技術的な安全性の確保です。この事故は、鉄道の安全を考える上で、決して忘れてはならない悲劇です。

まとめ

西成線列車脱線火災事故は、信号係の誤操作、安全装置の不備、そして戦時下の社会情勢が複合的に絡み合った悲劇でした。この事故を教訓に、二度とこのような悲劇が起こらないよう、安全対策を徹底することが重要です。

この事故は、日本の鉄道史において、正確な記録が残る中で最悪の死者数を出した事故です。
事故の背景には、戦時下の燃料不足という社会的な問題がありました。
この事故を教訓に、鉄道の安全対策が強化されることになりました。
多くの犠牲者の冥福を祈り、二度とこのような事故が起こらないようにする必要があります。


参考文献

「ガソリンカー轉覆發火し百七十三名惨死す」『大阪朝日新聞』1940年1月30日。
網谷りょういち、1997年、『信楽高原鉄道事故』、日本経済評論社
今村一郎、1962年、『機関車と共に』、ヘッドライト社
久保田博、2000年、『鉄道重大事故の歴史』、グランプリ出版
坂上茂樹・原田鋼、2005年、『「ある鉄道事故の構図」昭和15年安治川口事故の教訓は生かされたか』、日本経済評論社
佐々木冨泰・網谷りょういち、1992年、『事故の鉄道史』、日本経済評論社

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