親指トム

親指トム（Tom Thumb）

親指トムは、イギリスの童話に登場する小人の主人公です。その物語は、小ささを逆手に取った冒険と、妖精の女王からの特別な加護によって彩られています。

物語のあらすじ

物語は、アーサー王の宮廷に仕える正直な農夫夫婦の物語から始まります。子供に恵まれない夫婦は、魔術師マーリンに相談し、せめて親指ほどの小さな息子が欲しいと願います。マーリンの魔法により、願いは叶えられ、親指ほどの大きさのトムが誕生します。

妖精たちはトムの誕生を祝福し、妖精の女王は産婆となり、トムに特別な衣服と加護を与えます。トムはその小ささにもかかわらず活発で、様々な冒険を繰り広げます。友人とのいたずらが過ぎてビンに閉じ込められたり、アザミごと牛に飲み込まれたり、カラスに運ばれて巨人に食べられたりと、数々の危機に遭遇しますが、妖精の力と機転で乗り越えていきます。

最終的に、トムはサケに飲み込まれてしまいますが、そのサケがアーサー王の宮廷で調理されることになり、トムはサケの腹から生還を果たします。この出来事をきっかけに、トムは宮廷で人気者となり、様々な冒険を繰り広げることになるのです。

親指トムを題材にした作品

親指トムの物語は、様々な形で作品化されています。

小説

1621年には、リチャード・ジョンソンによって『親指トム一代記』が書かれました。これは、親指トムの物語の最古の記録とされています。ジョンソンは、「昔から伝わっている話をまとめた」と記していますが、物語は小人の王トワッドルとの勝負に勝ってアーサー王の宮殿に凱旋するところで終わっており、未完となっています。

17世紀以降も、親指トムは様々なおとぎ話や冒険談の題材となり、毒グモとの決闘や、ネズミに鞍をつけて騎乗するなどのアレンジが加えられた物語も生まれています。

映画

実写映画としては、1958年にジョージ・パル監督によってグリム童話版を原作とした映画が制作されています。また、1993年には『親指トムの奇妙な冒険』、2001年には『プセの冒険　真紅の魔法靴』、2010年には『残酷メルヘン　親指トムの冒険』といった作品が公開されています。

アニメーション

親指トムは、子供向けの題材としても人気があり、何度かアニメ化されています。1967年には日米合作で『001/7親指トム|001_7親指トム』が制作され、ヒーロー的な存在として描かれています。

類似する童話

親指トムのように、小さな主人公が活躍する童話は世界各地に存在します。日本では一寸法師が有名であり、グリム童話の「おやゆびこぞう」や、インドにも類似の物語が存在します。また、アンデルセン童話の「親指姫」も、小ささゆえに妖精と結びつく点で親指トムとの共通点が見られます。

関連項目

001/7親指トム|001_7親指トム: 親指トムをモチーフにしたアニメーション作品
トーマス・フィリップス: 親指トムの渾名があったイギリス海軍軍人
親指トムのブルースのように: ボブ・ディランの楽曲

参考文献

キャサリン・ブリッグズ著、平野敬一他訳『妖精事典』冨山房（1992年）　ISBN 4-572-00093-X

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