谷本正憲

谷本 正憲

（たにもと まさのり）

概要

日本の政治家、元自治官僚。石川県知事を1994年から2022年までの約28年間にわたり務め、歴代最長となる7期連続で在任した。知事退任後、現在は石川県公立大学法人の理事長として公職に携わっている。

生涯

生い立ちと官僚時代

1945年4月16日、兵庫県西脇市に生まれた。兵庫県立西脇高等学校を経て京都大学法学部で学び、1968年4月に自治省（現在の総務省）に入省した。同期には、後に衆議院議員や都道府県知事となる人物が複数いる。自治省時代には、宮崎市助役や茨城県総務部長として地方自治の現場に携わったほか、自治省本省で公務員第二課長、交付税課長、公営企業第一課長などを歴任し、行政実務の経験を積んだ。

石川県副知事、そして知事へ

1991年、自治省から石川県庁に出向し、当時の中西陽一知事のもとで副知事に就任した。副知事として県政に深く関わる中、1994年に中西知事が在任中に死去したため、その後任を決める知事選挙への出馬を決意した。この選挙では、新生党、公明党、民社党、日本新党、日本社会党といった当時の非自民連立政権を構成する5党の推薦を得て立候補した。選挙戦では、自由民主党の幹事長を務めていた森喜朗氏が支援する元農林水産事務次官の候補と激しく争い、初当選を果たした。この選挙の構図は、中選挙区制時代に石川県第一区で繰り広げられた森氏と奥田敬和氏（新生党）による政争、「森奥戦争」が知事選にも波及したものと捉えられた。

長期政権の確立

1994年の初当選後、谷本氏は石川県知事として7期連続で当選を重ねた。1998年の知事選挙では、自由民主党が独自候補の擁立を見送り、自民、民主党、公明党など主要7党の推薦を得て再選。3期目以降も、日本共産党を除くほぼ全ての主要政党から推薦や支持を得続け、盤石な選挙基盤を築いた。これにより、全国の現職都道府県知事の中で最も長い在任期間を記録する長期政権を確立した。

政策と実績

知事として、前任の中西知事の方針を継承し、「日本海側のトップランナー」「個性・交流・安心」をスローガンに掲げ、石川県の発展に向けた様々な政策を推進した。特に力を入れたのはインフラ整備であり、北陸新幹線の金沢開業、能登空港の整備、のと里山海道の無料開放といった交通網の拡充は、県内外からの交流促進や地域経済活性化に大きく貢献した。また、金沢城の復元や国立工芸館の誘致による歴史・文化施設の充実、石川県立音楽堂の設置、金沢港クルーズターミナルの整備による観光振興にも尽力した。農業分野では、石川県独自の高級ぶどう「ルビーロマン」の開発を支援するなど、産業振興にも積極的に取り組んだ。

人物

血液型はO型。前知事の中西陽一氏とは、旧自治省（内務省）出身であること、副知事から知事になったこと、そして石川県外（関西地方）出身で京都大学卒業であることなど、多くの共通点を持つ。中西知事がかつて議場で倒れた経験から、「一に体力、二に体力」を信条とし、健康管理を重視。毎朝、金沢市内を散策することを習慣としていたが、2014年には記者会見中に卒倒し、インフルエンザと診断されたこともあった。

物議を醸した発言と不祥事

知事としての公務遂行の傍ら、その発言がメディアで取り上げられ、物議を醸すこともあった。2017年には北朝鮮に関する発言で抗議を受け、後に撤回。新型コロナウイルス感染症が拡大していた2020年には、緊急事態宣言下の他都府県からの来県を促すかのような発言を行い、批判を受けて陳謝した。また、特定の業界の業績や事業者支援融資制度に関する発言も不適切であるとの指摘を受け、釈明や反省の意を示した。
不祥事としては、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため政府が5人以上の会食自粛を呼びかけていた2020年12月に、約90人が集まる後援会総会をホテルで開催したことが報じられた。これに対し、自身は感染対策を講じており問題ないとの認識を示した。

知事退任とその後

2021年11月、翌年3月に任期満了を迎える知事選挙に立候補せず、7期での勇退を表明した。これにより、1990年代に初当選した知事や、戦前・戦中生まれの知事が少なくなる一つの区切りとなった。知事退任後、2022年4月1日付で石川県公立大学法人理事長に就任し、引き続き石川県の発展に貢献している。2023年11月には、長年の地方自治への貢献が認められ、秋の叙勲において旭日大綬章を受章した。

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