豊田市美術館

豊田市美術館：20世紀美術から現代アートまでを網羅する、魅力的な公立美術館

1995年開館の豊田市美術館は、愛知県豊田市中心部、かつて挙母城があった高台に位置する公立美術館です。建築家の谷口吉生氏による洗練されたデザインの建物は、鉄とガラスを基調としたモダニズム建築の傑作。展示室だけでなく、廊下からの眺望や展示室間のさりげない視覚的つながりなど、来館者に驚きと発見を提供する工夫が凝らされています。

建物と景観：水面に映えるモダンな建築群

美術館の建物は、地形の傾斜を活かした設計で、1階と2階部分がどちらも地面に接しています。1階のエントランスは芝生の広場に面し、2階は広大な人工池に面した開放的な空間。緑色のスレートと白いガラスが美しい美術館本体と髙橋節郎館は、回廊状に連なり、水面に美しく映し出されています。

池の対岸には、彫刻が並ぶ散歩道や茶室、そして1978年に再建された七州城隅櫓が配置され、歴史と現代が調和した景観を創り出しています。ランドスケープデザインは、著名なピーター・ウォーカー氏によるものです。茶室「童子苑」は、かつてこの地の地名に由来し、隅櫓に隣接する「又日亭」は明治時代に寺部城から移築された書院です。これらの施設は、美術館の開館日に合わせて、一般市民にも開放されています。

多彩なコレクション：20世紀美術の精華と現代アートの息吹

豊田市美術館のコレクションは、20世紀初頭の日本画やアーツ・アンド・クラフツ運動、ウィーン分離派、バウハウス、シュルレアリスムなど、20世紀を代表する美術運動を網羅しています。日本の近代美術から現代美術まで、幅広い作品群を誇り、特に日本の現代作家の作品収集と展覧会開催には力を入れています。同じ作家の作品を複数所蔵しているため、常設展示以外にも、小規模な企画展を随時開催することが可能です。

また、戦後のイタリア美術であるアルテ・ポーヴェラや、ヨーロッパの戦後美術の主要な作家たちの作品にも力を入れています。小堀四郎、宮脇晴、宮脇綾子といった作家たちの作品も多数所蔵しており、常設展示されています。サルバドール・ダリ作品の中でも特に質の高い作品を収蔵していることも特筆すべき点です。

活気あふれる展覧会：コレクションと企画展の融合

豊田市美術館は、大規模な巡回展の誘致に頼ることなく、独自のキュレーションによる展覧会を開催しています。常設展示では、時代順ではなく、テーマごとに作品を展示する「テーマ展」形式を採用。コレクション作品を多角的に紹介しています。企画展も、コレクションと関連したテーマで、20世紀初頭から現代までの作品を取り上げており、全国的に見ても意欲的な企画が特徴です。過去には、バチカン[[美術館]]所蔵の美術品を含む大規模な展覧会も開催しています。

特に、2019年の「クリムト展　ウィーンと日本1900」は、リニューアル後の美術館で初の大規模展覧会として開催され、75日間で20万人以上の来場者を記録するなど大きな成功を収めました。

教育普及活動：未来を担う子どもたちへの美術体験

美術館では、子どもたちを対象とした教育普及活動にも力を入れています。美術作家を招いたワークショップや、作品ガイドボランティアによるギャラリーツアー、学校連携プログラムなど、多様なプログラムを提供しています。

開館当初から活動している作品ガイドボランティアは、美術館の教育普及活動の要です。ギャラリーツアー、団体対応、学校教育プログラム、ランドスケープツアーなど、幅広く活動しています。

川俣正氏による「ワーク・イン・プログレス：プロジェクト・イン豊田」は、豊田市の矢作川に木材を用いた遊歩道や東屋などを設置するプロジェクトで、地域住民も参加するユニークな活動です。

継続的な改修：バリアフリー化と省エネルギー化への取り組み

豊田市美術館は、開館後も継続的に改修工事を進めています。2015年の改修では、防水、外皮更新、バリアフリー化、セキュリティ向上などを実施。2019年の改修では、展示室の安全確保、照明のLED化による省エネルギー化、建物の長寿命化などを実現しました。これらの改修により、来館者の快適性と安全性を高め、持続可能な美術館運営に貢献しています。

豊田市美術館：地域社会に開かれた芸術の拠点

豊田市美術館は、単なる美術館にとどまらず、地域社会に開かれた芸術文化の拠点として、多様な活動を通じて市民生活を豊かにしています。洗練された建築、充実したコレクション、活気ある企画展、そして地域に根差した教育普及活動は、多くの人々を魅了し続けています。

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