趙正書

『趙正書』の概説

『趙正書』（ちょうせいしょ）は、北京大学が所蔵する西漢竹書の中に含まれる重要な文献で、始皇帝とその子胡亥の物語を中心に描かれています。この書は、特に秦王としての始皇帝の治世の終わりと、胡亥がどのようにしてその地位に至ったのかを詳細に語ります。『史記』との多くの相違点を持っており、その解釈や内容について様々な議論を呼んでいます。

内容の概要

物語は、秦王趙正（始皇帝）が病に倒れ、白人地方での重篤な容態が進行する中、後継者を選ぶ過程から始まります。趙正は病のために急いで白泉を目指すよう命じますが、その道中で事態はますます悪化し、彼は自らの死を予感します。また、跡継ぎについての議論を李斯に命じますが、李斯は趙正が自分を疑っているのではないかと考え、重圧を感じます。最終的に李斯と馮去疾は胡亥を後継者として推薦し、趙正もこれを承認します。

趙正の死後、胡亥が秦王として即位し、政権を握りますが、彼はすぐに兄の扶蘇や元帥蒙恬を殺害し、その後は自らの権力を強化するために残酷な手段を取ります。しかし、彼の独裁的な振る舞いは即座に国を不安に陥れ、彼の支配は短命に終わります。子嬰が胡亥に対して忠告を何度も行いますが、胡亥は耳を貸さず、結局、李斯をも殺して手元に残る敵を排除するのです。

その後、胡亥の重用していた趙高により暗殺され、混乱はさらに深まります。物語は胡亥がその権力のもとで数年で殺され、最終的に国が滅びるという結果を描いています。「胡亥が諌言を無視した結果、即位からわずか4年で命を落とし、国も滅んだ」と記されている点が特に印象的です。

登場人物の紹介

• - 趙正: いわゆる秦王、始皇帝。病気に倒れて後継者を選ぶ命令を出した。
• - 胡亥: 趙正の子で、王位を継ぎ、数多くの圧政を行った結果、最終的には自らが犠牲となる。
• - 子嬰: 王族の一員で、何度も胡亥に忠告をしたが聞き入れられなかった。
• - 扶蘇: 趙正の子で、胡亥が即位した際に殺された。
• - 李斯: 丞相、跡継ぎの議論に参加したが、最終的には胡亥に命を奪われた。
• - 趙高: サポートを受けて権力を拡大し、胡亥の暗殺を遂行。
• - 章邯: 将軍であり、権力の消滅後に趙高を討った。

歴史的背景と相違点

『趙正書』は『史記』との記録においていくつかの顕著な違いがあります。例えば、始皇帝は『史記』では「政」として知られていますが、本書では「正」と表記され、君主の称号も皇帝ではなく秦王とされています。さらに、胡亥の即位の経緯も異なり、趙正が李斯に後継者を選ばせた経緯が強調されています。

また、登場人物の命運も異なり、『趙正書』では李斯が胡亥に以下のような上書を用いて必死に訴えかけたことが強調されていますが、最終的に彼も胡亥の命によって殺されます。これらの記述から、この書が持つ独自の視点と、秦の歴史に対する解釈が垣間見えます。

まとめ

『趙正書』は、始皇帝と胡亥の政治的決断の結果としての悲劇を描くだけでなく、権力、忠告、そしてその無視がもたらす影響について深い考察を促します。この文献は古代中国の政治史において重要な位置を占めており、歴史的な背景を理解し、当時の人々の思考を知るための貴重な資料となっています。

もう一度検索