送電塔

送電塔とは

送電塔は、発電所で作られた電気を遠く離れた消費地まで運ぶために張り巡らされた架空電線路を、空中でしっかりと支える役割を担う、なくてはならない高構造物です。私たちの暮らしや産業活動に必要な電気を安定して供給する上で、極めて重要なインフラ施設と言えます。

構造と材質

その多くは、軽量で強度が高い鋼鉄製のトラス構造（骨組み構造）でできています。しかし、設置される場所や用途によっては、コンクリートや木材、さらには特殊な環境向けにアルミニウムが使われることもあります。電線自体は、電気を安全に絶縁するための碍子（がいし）と呼ばれる連結部品を介して、塔の腕金（アーム）に固定されます。塔と塔の間隔は比較的長いため、電線は重力によって自然なたるみを持ち、曲線を描きます。また、落雷から電線や施設を守るため、塔の最上部には「架空地線」と呼ばれる接地線が張られているのが一般的です。

種類と設計

送電塔には、使用される電流の種類（高電圧交流、高電圧直流、電気鉄道用など）や電圧、運ぶ電線の本数によって、様々な形状やサイズが存在します。一般的な高さは15メートルから55メートル程度ですが、中には中国の舟山島送電線のように、高さが380メートルにも達する世界一の例もあります。

機能面からの主な分類としては、電線を吊り下げる「懸垂構造」、電線の強い張力を受け止める「耐張構造」、電線を終端部で固定する「引留構造」などがあり、これらを組み合わせた構造も見られます。電線路がまっすぐ進む場所では「直線鉄塔」が、方向転換する場所では「角度鉄塔」が使われます。

デザインも多岐にわたり、単一の電線路を支える「烏帽子型塔」や「門型塔」、複数の電線路を運ぶための「ドナウ型塔」や「量産型塔」、さらに多くの回線を収容する「クリスマスツリー型塔」などがあります。同じ塔に周波数や位相が異なる交流回線や、交流と直流の回線を併設するケースも見られます。

支持構造の観点では、基礎で自立する一般的な塔のほか、電線が断線した場合の不均衡な荷重を隣接する塔と分散する「半柔軟塔」、そして設置面積を抑えつつワイヤー（ガイワイヤー）で塔を支える「ガイドマスト」などがあります。

建設と保守

送電塔は、実際に建設される前に、鉄塔試験場でプロトタイプがテストされ、十分な強度や安全性が確認されます。建設方法には、地面で水平に組み立ててからワイヤーなどで引き起こす方法や、最終的な設置位置で垂直に部材を組み上げていく方法などがあります。現場へのアクセス状況に応じて、大型クレーンやクライミングクレーン、さらにはヘリコプターが活用されます。部材の固定には多くのボルトやナットが使われ、人の手によってしっかりと締め付けられます。

完成した送電塔には、電線路の名称や塔の番号を示す識別タグが取り付けられ、保守点検や障害発生時の位置特定に役立てられています。また、航空機の安全確保のため、高い塔や広い区間を渡る電線には、航空障害灯や反射鏡が設置されることがあります。一般の人が高電圧の危険区域に近づくのを防ぐため、警告標識が掲示され、地面から一定の高さまで有刺鉄線柵が設けられることもあります。

特殊な事例

地理的な条件や特定の機能の必要性から、特別に設計された送電塔も存在します。例えば、広い谷や川、海峡を横断する場所では、船舶の航行に必要な高さを確保するため、非常に高い塔が建設されます。導体間の距離を大きく取るために、各電線を別々の柱で支えることもあります。米国フーバーダムやスイスに見られるような、急峻な斜面に沿って電線を敷設するために塔を傾けて設置する例もあります。また、ごく稀ですが、発電所の煙突に送電線の引き留め設備が設置されているケースや、電波送信用のアンテナが併設されている例も見られます。景観に配慮したミニマリストデザインや、ハンガリーのピエロ形のようなユニークなデザインの塔も存在します。

世界には、高さや構造で特に知られる注目すべき送電塔が数多く存在し、それぞれがその地域の電力供給を支える重要な役割を果たしています。

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