那須与一

那須与一とは

那須 与一（なす の よいち）は、平安時代末期において源頼朝に仕官していた武将であり、特に弓術の名手として名を馳せました。彼は系図的には那須氏の二代目当主とされ、一般的には宗隆と名乗っていましたが、家督相続後は資隆を名乗ったとされています。本項目では、与一の名で統一して記述します。

名の由来

彼の名「与一」は数字の一を余すことから、「余一」という意味を持ち、十一男としての通称に由来しています。同時代に存在した佐奈田義忠や浅利義遠と合わせて「源氏の三与一」とも呼ばれています。

略歴

那須与一についての史料は非常に限られており、主に『平家物語』や『源平盛衰記』などの軍記物によって彼の事績が伝えられています。彼は嘉応元年（1169年）頃に、那須資隆の子として神田城（現・栃木県那須郡那珂川町）で生まれたと見られています。

治承・寿永の乱では、兄の十郎為隆とともに源頼朝側に与し、さらに源義経の軍に従軍しました。特に元暦2年（1185年）に行われた屋島の戦いでは、敵の軍船に掲げられた扇の的を見事に射落とし、大きな功績を挙げました。この成就により、源頼朝からは5カ国にわたる荘園を与えられました。彼の兄弟の多くが平氏側に立ち、十郎為隆も罪を受けたため、与一は那須氏の家督を引き継ぐことになりました。与一は逃亡していた兄たちを赦免し、領土を分け与えることで、下野国における那須氏の発展基盤を築いたとされています。

与一の死は不明ですが、山城国伏見で亡くなったと伝えられています。家督は五郎資之（之隆）が継承しました。その後、宇都宮朝綱の子である頼資が養子となり、家業を引き継ぎました。頼資の子の光資は、1193年に源頼朝の那須巻狩の際に饗応役を務めたとも言われています。

異説・伝承

与一の弓の腕前に関する伝承が多く存在します。彼は幼少のころから優れた弓技を持ち、父の資隆を驚かせたという話があります。また治承4年（1180年）には那須岳での弓の稽古中に義経に出会い、源氏方に従軍する契約を交わしたという伝説もあります。更に、彼が掲げた扇の的を射抜いたという話は非常に有名です。

また、与一が射落とした扇に基づいて得た荘園の一つ、備中荏原荘が彼に関連しています。この伝承の真偽は不明ですが、少なくとも鎌倉時代中期までに那須氏の一族がこの地域を支配していた記録が存在します。

与一があまりにも弓術に没頭したため、左右で腕の長さが異なったという説も残っています。平家方の玉虫御前が彼に扇の的を差し出したという伝説もあり、彼の嫡男小太郎と玉虫御前がその後幸せに暮らしたとも伝えられています。

墓所

与一の墓は京都府の即成院に位置していますが、兄の資之が分骨して設けた功照院も有名です。後に那須氏の菩提寺として再建された玄性寺は、与一の本墓とされています。この他にも各地に与一にまつわる墓所や供養塔が存在し、信仰され続けています。

関連書籍および文化

与一に関連する書籍や作品も多く、彼の生涯や戦歴を元にした小説、研究書、展示図録などが出されています。また、歌謡曲や漫画、ゲームなどさまざまなジャンルに彼の名が登場し、文化的な影響を及ぼしています。特に和歌山県みなべ町の盆踊りや多摩美術大学のモニュメントに見られるように、彼の伝説は今も人々に愛されています。

その豪胆で勇敢な姿は、今でも日本人の心の中に生き続けていることでしょう。

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