邪神伝説シリーズ

邪神伝説シリーズ：クトゥルフ神話を彩るダークファンタジーの世界

『邪神伝説シリーズ』は、矢野健太郎氏によって1988年から1993年にかけて連載された日本の漫画作品です。クトゥルフ神話という、アメリカの怪奇小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトによって創造され、オーガスト・ダーレスをはじめとする多くの作家によって発展させられた架空の世界観を土台にしています。しかし、単なるパロディや模倣ではなく、ラヴクラフト作品を深く理解した上で、独自の解釈と設定を加え、新たな世界観を構築している点が大きな特徴です。

物語の中心:

物語の中心となるのは、旧支配者の一柱であるハストゥールの力を宿した少女、星間渚です。彼女は、ハストゥールの復活を企む父から逃れ、旧支配者に対抗する組織「ケイオス・シーカー（CS）」に身を寄せます。CSは、超能力者や特殊な能力を持つ者たちから構成されており、渚は彼らと共に、様々な事件に巻き込まれていきます。

多様なエピソード:

シリーズは、『ラミア』、『ケイオスシーカー』、『ダーク・マーメイド』といった複数のエピソードで構成されています。それぞれのエピソードは独立した物語でありながら、全体として有機的に繋がった壮大な物語を形成しています。『渚事件簿』シリーズは、星間渚を主人公とした連作で、彼女の成長と葛藤が描かれています。一方、『CALL OF CTHULHU（クトゥルフの呼び出し）』は、シリーズ全体の雰囲気とは異なるギャグ漫画として、独特の存在感を放っています。

魅力的なキャラクターたち:

『邪神伝説シリーズ』には、個性豊かなキャラクターたちが登場します。

星間渚: ハストゥールの力を継承した少女。明るく元気な性格だが、辛い過去を抱えている。
ケイン・ムラサメ: CSのメンバーで、渚の保護者的な存在。冷酷な一面も持つ。
ラバン師: CSの指導者。謎に包まれた人物。
メグ: CSのメンバーで、渚の友人。
アラン・マクニッシュ: CSのメンバーで、渚の教官。
松井孝: CSの日本支局員。
* その他: 美亜（マドーラ）、ラミアなど、魅力的なキャラクターが多数登場し、それぞれの物語を彩ります。

クトゥルフ神話の要素と独自の設定:

『邪神伝説シリーズ』は、クトゥルフ神話に深く根ざしていますが、単に既存の設定を借りているだけではありません。ラヴクラフトやダーレスだけでなく、日本のクトゥルフ作家たちの作品からも影響を受けており、それらを巧みに融合させています。また、独自の解釈や設定も加えられており、例えば、旧支配者と対立する「ベテルギウスの旧神」や、CSといった独自の要素が物語に深みを与えています。

世界観の構築:

作者はダーレス版クトゥルフ神話をベースにしながらも、ラヴクラフトの原典作品をテーマとして、独自の解釈と設定を融合させ、独自の深い世界観を築き上げています。邪神は地水火風の四大元素に対応し、互いに対立するという設定や、ケイオス・シーカーの存在などが、この作品の世界観を特徴付けています。

影響を受けた作品:

『邪神伝説シリーズ』は、『永劫の探究』（オーガスト・ダーレス）や『暗黒教団の陰謀 輝くトラペゾヘドロン』（大滝啓裕）といった作品からも影響を受けており、それらの作品との繋がりを感じることができる点も魅力の一つです。

まとめ:

『邪神伝説シリーズ』は、クトゥルフ神話をベースにしながらも、独自の解釈と設定によって全く新しい世界観を作り上げた、完成度の高い漫画作品です。魅力的なキャラクターたち、スリリングな展開、そして奥深い世界観は、読者に深い印象を与え、忘れられない作品となるでしょう。単行本全5巻に加え、電子書籍版も発売されているため、ぜひ一度手に取ってみてください。

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