酬恩庵

酬恩庵：一休宗純ゆかりの歴史と文化の宝庫

酬恩庵は、京都府京田辺市に位置する臨済宗大徳寺派の寺院です。山号を霊瑞山といい、本尊は釈迦如来。「一休寺」または「薪の一休寺」の通称で広く知られています。一休宗純ゆかりの寺として有名で、彼の草庵が中興の礎となり、現在も多くの歴史的建造物や文化財、そして独特の「一休寺納豆」が人々を魅了しています。

歴史：一休宗純と酬恩庵

酬恩庵の歴史は、正応年間（1288年～1293年）に南浦紹明が開いた妙勝寺にまで遡ります。元弘年間（1331年～1334年）の兵火により衰退しましたが、康正2年（1456年）、一休宗純が草庵を結び、中興を果たしました。師への恩に報いる意味で「酬恩庵」と名付けられました。一休はその後も大徳寺の住持を務めながら、酬恩庵に通い続け、晩年を森女（森侍者）と共に過ごしました。文明13年（1481年）、88歳でこの地で亡くなり、「死にとうない」という言葉を残したと伝えられています。

慶長19年（1614年）の大坂冬の陣では、前田利常が休息した記録も残っています。慶安3年（1650年）、前田利常による伽藍の再興が行われ、狩野探幽による障壁画43面が納められました。江戸幕府からの朱印状も与えられ、伽藍は大きく整備されました。近年では、再興に佐々木定治が関与していたことが明らかになり、江戸時代前期の六角氏宗家に関する新たな知見がもたらされました。

境内：数々の文化財と見どころ

酬恩庵の境内には、歴史と文化を感じさせる数多くの建造物や庭園、そして文化財が点在しています。

本堂（法堂、重要文化財）: 室町幕府将軍足利義教が建立した禅宗様仏殿。
開山堂（大応堂）: 妙勝寺開山南浦紹明の木像を安置。
方丈（重要文化財）: 前田利常による再建。狩野探幽の障壁画（複製）や、一休宗純の坐像（重要文化財）を収める。
方丈庭園（国指定名勝）: 南庭、東庭、北庭からなる枯山水庭園は、松花堂昭乗、佐川田喜六、石川丈山の合作と伝えられる。
虎丘庵（京都府指定有形文化財）: 一休74歳の時に移築された茶室造りの建物。
虎丘庭園（国指定名勝）: 室町時代の禅院枯山水庭園。
鐘楼（重要文化財）、東司（重要文化財）、庫裏（重要文化財）、浴室（重要文化財）: 前田利常による再建・修復。
その他: 羅漢像、能楽観世流三代観世三郎元重（音阿弥）の墓など、多くの史跡・文化財が残る。

これらの建造物に加え、一休宗純の像や墓所（宗純王廟）も存在し、一休宗純の人生と功績をしのぶことができます。

文化財：数多くの指定文化財

酬恩庵には、多くの国宝・重要文化財、そして京都府指定の文化財が数多く残されています。本堂、方丈、庫裏、東司、浴室、鐘楼といった主要な建造物に加え、一休宗純の木造坐像、狩野探幽の障壁画など、歴史的価値の高い美術工芸品も数多く所蔵されています。

一休寺納豆と茶道

酬恩庵は「一休寺納豆」でも有名です。約500年前、一休宗純が宋の製法をもとに伝授したとされる、独特の塩辛い納豆です。

また、一休宗純は茶道にも大きな影響を与えました。妙勝寺の開山南浦紹明が宋から持ち込んだ禅堂の茶の作法を、一休が村田珠光に伝え、それが武野紹鴎、千利休へと受け継がれ、現在の茶道へと発展していったと言われています。

アクセス

酬恩庵へのアクセスは、近鉄京都線新田辺駅、JR片町線（学研都市線）京田辺駅、または京阪本線石清水八幡宮駅から京阪バスを利用できます。京都駅からの直行バスも運行しています。詳細は酬恩庵のホームページをご確認ください。

まとめ

酬恩庵は、歴史、文化、そして自然が調和した貴重な場所です。一休宗純ゆかりの寺としてだけでなく、多くの文化財を有する歴史的寺院として、訪れる価値のある観光地と言えるでしょう。 静寂に包まれた境内を散策し、歴史と文化に触れてみてください。

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