重巡洋艦

重巡洋艦の概説

重巡洋艦（じゅうじゅんようかん、英：Heavy Cruiser）は、大型の巡洋艦の一分類で、特に軍艦の中でも重要な役割を担っています。この艦種は1930年に成立したロンドン海軍軍縮条約によって正式に定義され、艦砲の径が6.1インチ（155mm）を超え、8インチ（203mm）以下のものが重巡洋艦とされました。その排水量は10,000トン以下で、略称として「重巡」が用いられることが多いです。

歴史的背景

重巡洋艦の起源は、1922年のワシントン海軍軍縮条約に遡ります。この条約では、砲口径が5インチ（127mm）を超え、8インチ（203mm）以下の艦が巡洋艦として分類され、基準排水量が10,000トン以下と定義されました。この分類規定に対抗する形で、日本海軍はアメリカ海軍のオマハ級軽巡洋艦の出現を受け、1923年に新型巡洋艦「古鷹」を建造しました。

その後、列強各国は条約の枠内で強力な戦力を持つ巡洋艦の建造にしのぎを削ることとなり、この時期に重巡洋艦の開発競争が激化します。1930年代に開かれたロンドン海軍軍縮会議では、重巡洋艦と軽巡洋艦の違いが明確にされ、各艦の保有制限が設定されました。重巡洋艦は主に一等巡洋艦と呼ばれ、軽巡洋艦は二等巡洋艦という名称で区分されました。

重巡洋艦の特徴と設計

ロンドン海軍軍縮条約では、主砲の口径に基づいて艦を分けましたが、重巡洋艦はその制限により、同口径の敵の攻撃に耐えうるだけの装甲を持つことが難しいというバランスの課題を抱えていました。特に日本やイタリアでは、この10,000トンという制限を超える艦が建造される事例も見られたが、それでも戦闘能力は十分ではありませんでした。

第二次世界大戦の開戦と共に、ロンドン条約は失効し、これにより各国は新たな艦の建造を続けました。日本海軍は、その失効前から155mm砲を装備した最上型重巡洋艦を建造し、実際には戦後に203mm砲への換装が行われましたが、公式の分類は軽巡洋艦のままでした。

各国の重巡洋艦

• - 日本: 日本海軍が建造した重巡洋艦には、古鷹型、青葉型、妙高型、高雄型、最上型などがあります。これらの艦名にはすべて山の名前が付けられています。

• - アメリカ: アメリカの重巡洋艦は、ペンサコーラ級、ノーザンプトン級、ポートランド級などがあり、艦名は都市名に由来しています。

• - イギリス: 英国海軍では従来の重巡よりも軽巡の配備が多く、ホーキンズ級、ケント級、ノーザンプトン級などが存在します。

• - フランス: フランス海軍にはデュケーヌ級、シュフラン級、アルジェリーなどの艦籍があります。

• - その他の国: イタリアやドイツ、ロシアなど、他の国々も各色の重巡洋艦を保有していました。

終焉と影響

第二次世界大戦後、艦対艦ミサイルの出現により、大口径砲を搭載する意義が薄れていき、重巡洋艦は建造されなくなりました。このことに伴い、軽巡と重巡の明確な区別も消失しました。アメリカ海軍のデモイン級重巡洋艦のニューポート・ニューズが1949年に就役したことで、重巡洋艦という艦種は正式に歴史の中に姿を消しました。

重巡洋艦はその歴史の中で多くの艦艇が建造され、各国の海軍戦力に影響を与えた重要な艦種であり、今なおその存在が艦船史で語り継がれています。

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