金易二郎

金易二郎：昭和初期将棋界の礎を築いた男

金易二郎(こんやすじろう、1890年10月10日-1980年6月23日)は、大正から昭和初期にかけて活躍した、日本将棋界に多大な貢献をした棋士です。名誉九段の称号を持ち、棋士番号はなんと1番。秋田県出身で、関根金次郎十三世名人門下として、激動の時代を生き抜きました。

蕎麦屋の次男から将棋界へ

金易は、羽後町'>[秋田県]]雄勝郡羽後町]の蕎麦屋「弥助そばや」の三代目店主の次男として生まれました。[[1908年、井上義雄八段との対局で才能を見出され、棋士への道を歩み始めます。井上八段から「雄」の一字を賜り、金易雄と名乗った時期もありました。

当時、将棋界は家元制崩壊後の混乱期。井上八段は関根金次郎と共に将棋同盟社を結成しましたが、後に脱退し、将棋同志会を結成しました。しかし、勢力では関根派が優勢だったため、金易は関根門下への移籍を志願します。当初は門下入りを拒否されましたが、強い意志で関根名人門下へと入りました。1912年には四段に昇段します。

関根門下での活躍と棋界統一への貢献

1917年には六段、そして七段へと昇段。八段昇段を巡る兄弟子との対立により、関根は将棋同盟社を脱退し、東京将棋倶楽部を設立しますが、金易は関根に付き従い、倶楽部の設立に尽力します。1919年には、後の名人となる木村義雄と対戦した記録も残っています。木村義雄は後に自らの回想録で、金易と花田長太郎を最初の目標としていたと記しています。

1924年には、棋界統一に貢献した功績により、八段に昇段。1927年の日本将棋連盟設立にも参加し、1934年には同連盟会長に就任します。1935年から始まった実力制名人戦にも参加、神田事件による棋界再分裂の収束後は、将棋大成会会長を1936年まで務めました。1937年には坂田三吉の要望に応え、木村・花田との対戦を実現させるなど、棋界の発展に尽力しました。

戦中戦後の混乱期と引退

戦中戦後の混乱期においても、将棋大成会のために尽力し続けました。順位戦にも1期だけ参加しましたが、1947年に引退します。1954年には日本将棋連盟から名誉九段を贈位され、1970年には勲四等瑞宝章を受章するなど、将棋界への貢献は高く評価されています。

人間性と逸話

金易は、関東の棋士と交流が少なかった坂田三吉と親交が深く、上京した坂田の世話などを担当していました。また、弟子の木村義雄を高く評価し、「さん」付けで呼ぶほどだったと言われています。一方、兄弟子の土居市太郎とは折り合いが悪かったと伝えられています。

金易は長考派の受け将棋を得意とし、西の重鎮木見金治郎と比較されることもありました。持ち時間制導入直後の対局では、中盤で時間切れになったという逸話も残っています。勝気な性格で、勝つと弟子にお小遣いを渡す一方、負けると機嫌が悪くなっていたというエピソードも伝えられています。お酒は飲めず、甘いものが好きだったようです。

「泣き銀の一局」と棋士番号1

坂田三吉の有名な「銀が泣いている」という一局の時期については諸説ありますが、金易が観戦記者の証言を弟子に伝えた話が根拠となっている説もあります。1977年、棋士番号制度開始時に、プロ入りが最も早かったことから、金易には棋士番号1が付与されました。

家族と弟子

娘の八重子は高柳敏夫と結婚し、高柳門下からは十六世名人の中原誠が輩出しています。中原誠の得意戦法である中原囲いは、金易から教わった相掛かりを基に開発されたものです。

参考文献

金易二郎の生涯と功績を知る上で、多くの文献が参考になります。木村義雄の自伝や、日本将棋大系、山本亨介の著作、NHKの取材記事など、多角的な視点から彼の生涯を学ぶことができます。これらの文献から、金易二郎という人物像とその時代背景をより深く理解することができるでしょう。

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