鉄道記念物

鉄道記念物とは

鉄道記念物とは、日本の鉄道に関する歴史的・文化的に重要な事物等を指定し、保存・継承するための制度、またはその制度によって指定された事物そのものを指します。この制度は、1958年（昭和33年）に日本国有[[鉄道]]（国鉄）によって制定されました。また、1963年（昭和38年）には、地方的に重要な事物等を指定する準鉄道記念物も制定されました。

制度の変遷

1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化後は、既存の記念物はJR各社に管理が移管されましたが、長らく新たな指定は行われませんでした。しかし、2004年（平成16年）に西日本旅客[[鉄道]]（JR西日本）が準鉄道記念物から鉄道記念物への格上げという形で、18年ぶりに指定を再開しました。2010年には、北海道旅客鉄道（JR北海道）も同様に準鉄道記念物からの格上げで指定を行っています。

鉄道記念物の指定基準

鉄道記念物は、1958年10月に制定された「鉄道記念物等保護基準規程（国鉄総裁達第509号）」に基づいて、国鉄総裁が指定していました。その基準は以下の通りです。

1. 国鉄および国鉄以外の者の地上施設その他の建造物・車両・古文書などで、歴史的文化価値の高いもの。
2. 国鉄及び国鉄以外の者の制服・作業用具・看板その他の物件で、諸制度の推移を理解するために欠くことのできないもの。
3. 国鉄における諸施設の発祥となった地点、国鉄のある伝承地、鉄道の発達に貢献した故人の遺跡（墓碑を含む）などで歴史的価値のあるもの。

指定された記念物は、滅失・毀損しないよう長く保存される必要があり、そのために管理者、保守責任者、管理責任者が定められます。管理者は、記念物を保護するための保存施設を設置し、保守責任者および管理責任者に管理させなければなりません。もし記念物が滅失・毀損した場合は、管理者は原形に復旧するよう措置を講じ、保存施設が滅失・毀損した場合は、保守責任者、管理責任者が修理・復旧を行います。

鉄道記念物の現状と課題

2018年までに44件の鉄道記念物が指定されています。しかし、技術史家からは、指定対象が国鉄関係に偏重しているという批判がありました。また、国鉄民営化後は記念物の扱いが宙に浮いた状態となり、その動向が注目されていました。2004年にJR西日本が記念物の指定を再開し、制度を引き継ぐことを宣言しましたが、他のJR各社は追随していません。さらに、有害物質が含まれているために除去費用を捻出できず、解体に至ったケースも存在します。JR・私鉄を問わないすべての鉄道を対象とした顕彰制度に改めるには、それを統括する組織が存在しないという課題もあります。

主な鉄道記念物

以下に、主な鉄道記念物を紹介します。

1号機関車 (No.1) - 鉄道博物館所蔵
1号御料車 (No.2) - 鉄道博物館所蔵
弁慶号機関車 (No.3) - 鉄道博物館所蔵
旧長浜駅 (No.4) - 長浜鉄道スクエア所在
0哩標識 (No.5) - 旧汐留駅構内所在
善光号機関車 (No.6) - 鉄道博物館所蔵
5号御料車 (No.7) - 博物館明治村所蔵
6号御料車 (No.8) - 博物館明治村所蔵
鉄道古文書 (No.9) - 鉄道博物館所蔵
佐賀藩製造の機関車模型 (No.10) - 佐賀県立博物館所蔵
大阪駅時鐘 (No.11) - 京都鉄道博物館所蔵
旧逢坂山ずい道東口 (No.12) - 滋賀県大津市所在
旧手宮機関庫 (No.13) - 小樽市総合博物館（鉄道・科学・歴史館）所在
野辺地防雪原林 (No.14) - 東北本線野辺地駅付近所在
* 開拓使号客車 (No.15) - 鉄道博物館所蔵

準鉄道記念物

準鉄道記念物は、地方的に見て歴史的文化価値の高いもの（将来鉄道記念物になりうるもの）を支社が指定するもので、1963年に制定されました。鉄道記念物に比べてローカル色が強いのが特徴ですが、管理者、保守責任者、管理責任者が置かれ、長く保存するための体制がしかれているのは鉄道記念物と同様です。2024年までに60件が指定され、うち8件が鉄道記念物に昇格しています。

鉄道記念物は、日本の鉄道史を語る上で欠かせない文化遺産です。今後の制度の発展と、これらの貴重な遺産の保護・継承が期待されます。

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