長い髪の少女

「長い髪の少女」は、1960年代後半の日本において一世を風靡した音楽ムーブメント、グループ・サウンズ（GS）を代表するバンドの一つ、ザ・ゴールデン・カップスが1968年4月1日に発売した通算3枚目のシングルレコードです。

この楽曲は、作詞を橋本淳、作曲を鈴木邦彦が手掛けました。これは、ザ・ゴールデン・カップスが前年の1967年にリリースし、ヒットを記録したセカンドシングル「銀色のグラス」と同じ作家陣のコンビによるものです。「銀色のグラス」で一定の商業的成功を収めたことを受け、次作となる「長い髪の少女」では、さらに広範なリスナー層への浸透を目指し、市場のニーズに応えようとする意図が強く反映されました。具体的には、バンドが持つクールで本格的なロックサウンドの基盤の上に、前作にも見られた哀愁の要素を深めつつ、日本人にとってより馴染みやすい歌謡曲的なメロディラインや構成が意識的に取り入れられています。編曲も作曲者である鈴木邦彦が担当し、バンドの個性を生かしながらも、楽曲の情緒的な側面を際立たせるアレンジが施されました。

こうした制作陣の試みは功を奏し、「長い髪の少女」は当時のオリコンチャートで最高位14位を記録するヒットとなりました。硬派な音楽性と大衆的な魅力が見事に融合した本作は、ザ・ゴールデン・カップスにとって商業的にも成功した重要な一曲として位置づけられています。

楽曲のメインボーカルは、バンドの顔の一人であるマモル・マヌーが担当しました。彼の独特のハイトーンボイスと豊かな表現力が、切ない歌詞とメロディが織りなす世界観を深く描き出しています。シングル盤には、A面に表題曲である「長い髪の少女」（演奏時間 2分43秒）、B面にカップリング曲「ジス・バッド・ガール」（演奏時間 2分18秒）が収録されました。「ジス・バッド・ガール」は、作詞をケネス伊東、作曲をベーシストのルイズルイス加部が担当しており、編曲は鈴木邦彦が手掛けています。

「長い髪の少女」は、その美しいメロディラインと普遍的なテーマから、発表から長い年月を経ても多くのアーティストによってカバーされ続けています。これは、本楽曲が単なる時代のヒット曲に留まらず、日本のポピュラー音楽におけるスタンダードナンバーとしての地位を確立していることを示しています。主なカバーアーティストとしては、以下のような名前が挙げられます。

奥村チヨ：1968年発表のアルバム『チヨとあなたの夜』に収録。
カルメン・マキ：1970年リリースのアルバム『Goodbye My Memories』に収録。
ゆうき剛：オリジナルの歌唱者であるマモル・マヌー自身が、ソロ活動に転じた後の1973年に「ゆうき剛」名義でシングルとしてセルフカバー。
ダウン・タウン・ブギウギ・バンド：1976年のGSカバーアルバム『GS』に収録。
メイジャー・チューニング・バンド：1977年のメドレー楽曲「ソウル・これっきりですよ!!」の一部として歌唱（同名シングル収録）。
ザ・マイクハナサーズ：1989年発表のメドレー曲「ブルー・シャトウを君だけに」（シングル『二人でカンパイ!』収録）の中で歌唱。
Mi-Ke：1991年のGSカバーアルバム『想い出のG.S.九十九里浜』に収録。このバージョンには、ザ・ゴールデン・カップスのオリジナルメンバーであるデイヴ平尾がゲストボーカルとして参加しており、話題となりました。
庄野真代 with 浜田山〜ず：2001年のアルバム『Time Traveller vol.1〜時代の夜汽車〜』に収録。
星奈々：2002年リリースのシングル「Never Forget～最愛～/長い髪の少女」に収録。
天童よしみ：2007年のカバーアルバム『天童よしみ・よしみコレクション ～歌心名曲選～II』に収録。
髙橋真梨子：2008年に発売されたカバー・アルバム集『紗 BOX』の中の一作品に収録。
清水誠：2008年の近田春夫&ハルヲフォンのアルバム『リメンバー・グループ・サウンズ』に収録されたバージョンでボーカルを務めました。
* 吉幾三：2019年のカバーアルバム『あの頃の青春を詩う vol.4 グループサウンズ編』に収録。

これらの幅広いジャンル、世代のアーティストによるカバーは、「長い髪の少女」が持つ楽曲の質の高さを証明しています。ザ・ゴールデン・カップスの革新的な音楽性と、普遍的な哀愁を帯びたメロディが融合したこの楽曲は、日本の音楽シーンにおいて今日なお輝きを放ち続ける名曲と言えるでしょう。

もう一度検索