長岡是容

長岡是容：激動の幕末を生きた熊本藩家老

長岡是容（ながおかこれかた）は、江戸時代後期、熊本藩を揺るがした改革者にして、時代の渦に翻弄された武士の一人です。通称は監物（けんもつ）。熊本藩家老・米田是睦の長子として文化10年（1813年）に誕生しました。

天保元年（1831年）、家老見習いとして藩政に携わり始めます。天保3年（1833年）、父の死をきっかけに家督を相続、1万5000石の所領を継承し、正式に家老の地位に就きました。江戸藩邸にて藩主・細川斉護に仕え、藩政改革に情熱を傾けました。

是容は、横井小楠や下津久馬らと協力し、藩校・時習館の改革などに尽力しました。荻昌国や元田永孚ら有識者たちと共に会読会を催し、「実学党」と呼ばれるグループを形成、藩政刷新を目指しました。しかし、保守的な「学校派」家老・松井佐渡らとの対立は深まり、改革は挫折を余儀なくされます。弘化4年（1847年）、親交の深かった水戸藩主・徳川斉昭が隠居させられると、是容も家老職を解任されました。

嘉永6年（1853年）、アメリカ合衆国ペリー艦隊の来航という激動の時代、是容は家老職に復帰します。浦賀の守備隊長として江戸に赴任し、そこで徳川斉昭、藤田東湖、吉田松陰、西郷隆盛といった時代の寵児たちと交流を深めました。しかし、攘夷の立場を貫いた是容は、開国論を唱える友人の小楠ら「沼山津派」（新民派）と対立、自らは「坪井派」（明徳派）を結成し、熊本藩内の対立を激化させることになります。

安政6年（1859年）、隠居先の八代で生涯を閉じました。是容の生涯は、藩政改革への情熱と、時代の変化に対応しきれなかった苦悩、そして攘夷という強い信念が複雑に絡み合ったものでした。彼の活動は、幕末期の熊本藩、ひいては日本の歴史に少なからず影響を与えたと言えるでしょう。改革者として、また攘夷論者としての彼の複雑な立場、そして彼を取り巻いた激動の時代を知る上で、是容の生涯は重要な意味を持っています。彼の功績と苦悩は、現代においても様々な視点から考察され、幕末期の日本の姿を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。

なお、是容は2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』にも登場しています。

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