攘夷論

攘夷論について

攘夷論（じょういろん）は、幕末期の日本において、外国との通商に反対し、強硬な姿勢で外国人を排撃しようとする排外思想を指します。この考え方は特に、江戸時代後期から広まり、主に水戸藩や国学の影響を受けて成長しました。

背景

攘夷論は、その起源を中国の春秋時代にまで遡ります。この言葉は、外国人（夷人）を排撃し、日本が独自の文化と国家を守ろうとする考え方が根底にあります。特に、19世紀に入ると、欧米諸国の日本への接近は加速し、これに対抗する思想が形成されました。当時、日本は西洋列強の影響を受けず、自らの文化と伝統を維持することを目指していました。

水戸学と攘夷論の確立

1820年代から1830年代にかけて、水戸藩では朱子学の影響を受けた水戸学が隆盛し、攘夷論が確立されました。この思想では、西洋諸国は卑しい存在であり、日本はその影響を受けてはいけないという強い意識がありました。特に、キリスト教の教えや考え方が国内に浸透することに対する危機感が強く、それを阻止するための攘夷の必要性が唱えられました。

ナショナリズムと攘夷論

また、国学の発展により、日本を「神国」とするナショナリズムが強まりました。これとともに、尊王思想や勤皇思想も力を得、これが現実の国際情勢における外国勢力の脅威と結びついて、尊王攘夷論となりました。この考え方は、特に1853年のペリー来航後顕著になり、開国を拒む意志を持った人々に支持されていきます。

具体的な運動

攘夷論を基にした具体的な運動としては、長州藩による外国に対する攻撃がありましたが、特に下関戦争はその代表的な例です。この戦争は長州藩が欧米連合軍と対峙し、結果的に敗北を喫したことで、攘夷論に対する批判が浮上しました。各藩の志士たちの中には、国際貿易を通じて力をつけるべきだという意見が広まるようになりました。

攘夷論の変遷

攘夷論はその後、開国と対立する形で議論され続けましたが、実際には鎖国論とより密接に結びついていました。明治政府が成立した後も、攘夷を主張する動きは完全に消滅することはなく、草莽の志士たちが攘夷運動を続ける事例も見られました。

後の時代には、日本が西洋列強に対抗するために国際関係を見直し、富国強兵の理念のもとで強化された結果、攘夷論は国際的な戦略として変化し、最終的には消滅していきました。攘夷論は国のあり方や国際社会に対する価値観をどのように更新していくのかを考えさせる重要なテーマでした。

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