長楽宮

長楽宮について

長楽宮（ちょうらくきゅう）は、かつて古代中国の前漢が栄えた都市、長安に存在した重要な宮殿です。この宮殿は秦の時代の興楽宮を基にしており、漢の高祖である劉邦によって5年目の紀元前202年に建設が始まりました。長楽宮はその後、紀元前200年に完成し、長安への遷都と共に高祖の宮殿として利用されることとなりました。

長楽宮は高祖の宮殿としての役目を果たしたものの、その後、漢の次代君主である恵帝が新たに完成させた未央宮に移ることとなり、長楽宮は皇太后の宮殿へと変わりました。このため、長楽宮は「東宮」とも呼ばれ、未央宮の東側に位置していたため、両者の位置関係がこの名称の由来となっています。

『三輔黄図』によると、長楽宮の周囲は20里（約8キロメートル）に及び、現代の発掘調査によるとその全長は10,370メートルに達しています。この広大な宮殿には多くの重要な建物が集まっており、前殿、鴻台、臨華殿、温室殿、長信宮、長秋宮、永寿殿、永寧殿などが存在しました。各建物はそれぞれの目的に応じて設計され、当時の皇族たちの生活を支えていました。

さらに、長楽宮の警護には特別な役職が設けられ、皇太后の安全を確保するための長楽衛尉が配置されました。これは、皇帝の宮殿である未央宮と同様に重要な役割を果たしていました。

歴史が進む中、前漢が滅亡した後、王莽が新を建てた際、長楽宮は一時的に「常楽室」と改称されました。しかし王莽の政権もやがて崩壊し、その後、長安に侵入した更始帝劉玄や赤眉の劉盆子は長楽宮を利用することとなりました。この時、長楽宮は他の宮殿と比較して被害を受けることはなく、安全な場所として機能しました。とはいえ、以降彼らによる略奪や破壊行為から完全には逃れられず、他の宮殿が被害を被る一方で、長楽宮も何らかの影響を受けたと言われています。

このように長楽宮は、古代中国における権力の象徴としての役割を果たし、その歴史を通じて多くの出来事の舞台となりました。長楽宮の遺構や発掘調査から明らかになる情報は、当時の皇族の生活や国家の運営を理解するための重要な手がかりとなっています。

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