防府天満宮

防府天満宮：歴史と文化が息づく山口の聖地

山口県防府市松崎町に鎮座する防府天満宮は、菅原道真公を祀る神社として広く知られています。延喜2年（904年）、道真公の没後まもなく創建されたとされ、「日本最初の天神様」を称する由緒ある社です。かつては「松崎天満宮」「宮市天満宮」とも呼ばれていましたが、近代社格制度下で県社に列格し「松崎神社」と改称、戦後の1953年に現在の「防府天満宮」となりました。

道真公が九州の大宰府へ流される途中に防府に滞在したという歴史的背景から、京都の北野天満宮、福岡の太宰府天満宮とともに「日本三大天神」の一つに数えられています。防府市街地の発展の中心として、古くから人々の信仰を集め、年間を通して多くの参拝者で賑わいます。正月の三が日には、約30万人を超える参拝客が訪れる盛況ぶりです。

迫力満点の祭事

防府天満宮では、年間を通して様々な祭事が行われています。中でも有名なのは、2月3日に行われる「牛替神事」と、11月の第4土曜日に開催される「御神幸祭（裸坊祭）」です。

牛替神事は、道真公の乗り物である牛車を引く牛の交代を行う神事で、古くからの伝統が息づいています。一方、御神幸祭は、約1トンの重さがある御網代を氏子が担ぎ、表参道の大階段を昇降するという勇壮かつ危険な祭事で、毎年多くの見物客を集めます。その迫力から「裸坊祭」の別名でも親しまれていますが、危険なため毎年怪我人が出ることも懸念されています。

また、8月3日から5日にかけては道真公の生誕を祝う「御誕辰祭」が開催されます。夜には1000本以上のろうそくに火を灯した幻想的な万灯祭が行われ、最終日には花火大会も打ち上げられます。

学問の神様としての信仰

道真公は学問の神様としても信仰を集めているため、受験シーズンには合格祈願の参拝者も多く訪れます。境内では、合格祈願のお守りや筆などを購入することができます。春の季節には、境内には梅の花が咲き誇り、美しい景観を創り出します。

境内と文化財

境内の西側には、楼閣式の参籠所「春風楼」があります。これは、かつて五重塔の建設が計画されたものの、完成に至らなかった経緯があり、その際に作られた組物を利用して明治6年（1873年）に完成しました。春風楼からは防府市街地を一望でき、御誕辰祭などの行事にも利用されています。

1952年に焼失した旧社殿に代わり、1958年に完成した現在の社殿は、登録有形文化財に登録されています。設計は工学博士の杉山信三氏、山口県出身の京都大学教授村田治郎氏の指導の下で行われました。

境内には、数多くの文化財が保存されています。国宝・重要文化財に指定されているものとしては、紙本著色松崎天神縁起絵巻、木造大日如来坐像、獅子頭、金銅宝塔などがあり、その歴史と文化の深さを物語っています。

防府天満宮を長年守り続けてきたのは、古代豪族・土師氏の子孫である武光家です。代々大宮司を務め、防府市の発展にも貢献してきました。

アクセスと周辺情報

防府天満宮へのアクセスは、山陽本線防府駅から徒歩20分、山陽自動車道防府西IC・防府東ICから車で10分です。周辺には、満願寺、迫戸祇園社、法花寺などの歴史的建造物や寺院が点在しています。

近年では、2018年に「おんなみこし連合渡御」のパレードがギネス世界記録に認定されるなど、防府天満宮は地元にとどまらず、全国的な注目を集める存在となっています。また、宮司の叔父である作曲家、鈴木淳氏の代表作『なみだ恋』の歌碑も境内に建立されています。

防府天満宮は、歴史、文化、信仰が一体となった、訪れる価値のある聖地です。

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