電気伝導率(でんきでんどうりつ、英: electrical conductivity)は、
物質が
電流をどれほど容易に通すかを示す物性値を指します。この特性は、導電率(どうでんりつ)や
電気伝導度(でんきでんどうど)とも呼ばれ、
物質の性質を理解する上で極めて重要です。
電気伝導率は一般に材料によって異なるため、
金属や
絶縁体といった異なる材料の性状を比較する際に役立ちます。
用語の使い分け
理学においては「
電気伝導率」という用語が多く用いられますが、
工学分野では「導電率」という表現が一般的です。
学術用語集では「
電気伝導率」が主流であり、次いで「
電気伝導度」が用いられることが多いです。
農業の分野では、
肥料の濃度を測る指標としても利用され、「EC濃度」として知られることが多いです。通常、
電気伝導率はギリシア文字のσ(シグマ)で表されますが、電気
工学においてはκ(カッパ)やγ(ガンマ)が使われる
場合もあります。また、
英語の「electrical conductance」は
電気伝導度と訳されることがありますが、標準用語としては「
コンダクタンス」が採用されています。
物質の種類によって
電気伝導率は大きく異なります。
金属は一般的に高い
電気伝導率を示し、一方で水晶などの
絶縁体は非常に低い値を示します。例えば、
銀の
電気伝導率は約6.30×10⁷ S/mと非常に高いのに対し、
ガラスの
電気伝導率は10⁻¹⁵ S/mから10⁻¹¹ S/mという非常に低い値です。
単位
国際単位系(SI)における
電気伝導率の単位は
ジーメンス毎
メートル(S/m)です。しかし、農業における
肥料の濃度を示す際には、より扱いやすい単位としてミリ
ジーメンス毎
センチメートル(mS/cm)が使われることが多いです。その他のSI単位としては毎
オーム毎
メートル(Ω⁻¹ m⁻¹)や
アンペア毎ボルト毎
メートル(A V⁻¹ m⁻¹)が存在します。また、国際的に採用されている導電率基準として、焼鈍標準軟
銅が用いられ、これが100% IACS(国際焼鈍
銅標準)とされています。
定義
電気伝導率は
抵抗率の逆数として定義されます。
抵抗 R は、
物質の
抵抗率 ρ に
長さ l と断面積 A の比で表されます。すなわち、
$$ R = ρ \frac{l}{A} $$
ここで, ρは
抵抗率であり、含まれている不純物や温度によって変わる特性です。この時の
電気伝導率 σ は、次のように表されます。
$$ σ = \frac{1}{ρ} $$
電気伝導率は
オームの法則を
場の関係を使って表現することができます。無限小の円柱を考え、位置ベクトル r における
電気伝導 σ(r)、電
場 E(r)、
電流密度 j(r) を用いると、
$$ j(r) = σ(r) E(r) $$
という関係式が得られます。この表現は導体内の
電荷の動きに基づいており、
電気伝導率が実際の
電流の流れに如何に影響を与えるかを示しています。
諸法則とモデル
ウィーデマン・フランツの法則は、
金属の
熱伝導率と
電気伝導率に関連性があることを示しています。これは
金属の
電気伝導率が
熱伝導率に比例することを表すもので、
熱力学温度に依存しています。
また、ドルーデ模型では導体内の
電子を気体の粒子と見なし、
物質の
電気伝導率を説明するモデルが提唱されています。このように、
電気伝導率はさまざまな分野で重要な役割を果たしています。