風土病

風土病（ふうどびょう）について

風土病とは、特定の地域における自然環境や住民の習慣、文化などが関与して発生する病気の総称です。この病気は、特にその地域独自の気候、土壌、生態系によって発病しやすい傾向があります。日本では「地方病」とも呼ばれています。

風土病の要因

風土病の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が考えられます。

1. 感染症・伝染病

地域特有の寄生虫やウイルスが感染症を引き起こすことがあります。例えば、コレラやマラリアなどの伝染病が挙げられます。日本では、成人T細胞白血病が九州や四国で多く見られます。また、急速に広がる伝染病はエピデミックと呼ばれます。

2. 風習

特定の文化的背景が病気の発生に寄与することもあります。例えば、パプアニューギニアのフォレ族ではカニバリズムの風習があったため、クールー病が多発しました。

3. 栄養障害

特定の地域では、土壌中のミネラル成分の偏りが栄養障害を引き起こすことがあります。海からの距離が遠い地域では海藻を摂取できず、栄養素が不足する場合があります。例えば中国の黒竜江省や江蘇省ではセレン欠乏症、モンゴルではヨウ素欠乏症が見られます。このような地域では、住民にミネラルを添加した食塩やサプリメントを与えることで病気の発生を減少させることが可能です。

4. 地理的条件

高緯度地域では多発性硬化症の発生率が高い傾向があります。

日本における風土病の例

日本には特有の風土病がいくつか存在します。例えば、山梨県では甲府盆地の低湿部において、日本住血吸虫病が流行しました。この病気は江戸時代から知られており、明治時代には医学的調査によって寄生虫が原因とされました。大正期には、宮入慶之助によってこの病気の中間宿主がミヤイリガイであると特定され、大規模な駆除作業が実施されました。

また、八丈小島ではマレー糸状虫症が流行していましたが、佐々学のフィールドワークを経て治療が進み、病気は撲滅されました。和歌山県の紀南地方では、かつては水由来の筋萎縮性側索硬化症（通称「牟婁病」）が発生していました。特にこの地域の土壌や水の特性が病気の原因と考えられています。

近年では流通状況が改善され、1970年代からこの病気の発生は激減し、1990年代には患者が確認されていません。しかし、三重大学医学部の調査によれば近年でもALSの発症率が他の地域に比べて高いことが報告されています。

まとめ

風土病は地域に根ざした病気であり、環境や文化が病気の発生に大きな影響を与えています。日本でも様々な風土病が存在し、その対策として医学的な研究や治療が行われてきました。地域特有の問題を解決するためには、理解と対策が欠かせません。

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